自分も含めて、多くの場合、人はそうしたことには無頓着だ。けれども、本来はエジプトにあるべきロゼッタ・ストーンを大英博物館の展示で観ること自体、歴史に“帝国主義”というフィルターがかけられていることにならないか?
本来イースター島にあるべきモアイ像がここで展示されているのは、やはりフィルターのかけられた歴史だと言えるのではないか?
上記2つの例で言えば、エジプトもイースター島も、大英博物館に対して、展示物を返還するよう求めている。本来は自分たちが所有しているべきモノを、不当に持ち去られたのだから、という主張だ。
大英博物館で開催された未公認ツアーとは
ウェブを中心にニュースなどを配信しているVICE MEDIA(本社は米国)は、こうした疑問をもとに未公認ツアー「Unfiltered History Tour 」を開催。展示物が持ち去られた当時の状況を、Instagramを使用してARで観られるようにした。Cannes Lions 2022 - THE UNFILTERED HISTORY TOUR
この事例は、昨年6月にフランスで開催されたカンヌライオンズ2022において、ソーシャル&インフルエンサー部門をはじめ3部門でグランプリを受賞し、超話題作となった。カンヌライオンズとは、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つアワードである。
対象となったのは、ロゼッタ・ストーンような“紛争”を持つ大英博物館の10の展示物。来館者がスマホをかざすだけで、持ち去られた当時のリアルな状況をARで体験できる。
出典:Cannes Lions 2022 - THE UNFILTERED HISTORY TOUR
また、特設サイトから同様のAR体験が出来るように設計されており、世界中のどこにいても楽しめるツアーだ。
このツアーのAR体験で「解説」を担当しているのは、地元のエキスパート。例えばロゼッタ・ストーンであれば、エジプト人の専門家が語っている。これは、展示物が元々属していた国や地域の人が解説すべきだ、という考え方からだろう。