モアイ像が大英博物館にあるのはなぜ? 「持ち去り」の歴史をARで解説する未公認ツアー

モアイ像にスマホをかざすと、持ち去られた当時のリアルな状況をARで体験できる

それは、同社の運営するVICE World Newsが、世界中の若い視聴者を対象としているから。そして、十分に報道されていない事柄に対して、議論を巻き起こす起点となることを標榜しているからだという。こうした施策により、競争の激しいメディア業界で一歩抜け出すことも意図した。

そして、この施策の企画運営を担当したのが、電通インドであることにも注目したい。そのせいか、このツアーのナレーションの多くは、インド訛りの英語で語られてもいる。

最近世界中で話題を集めた映画『RRR』を観ても、英国統治時代のインドにおけるインド人の厳しい現実は、凄まじいものがある。そうした歴史を持つインドの会社のスタッフだからこそ、実感を持ってこうした施策を企画・運営できたのだろうと推察する。

結果として、1800万回表示され、10万回以上のシークレット・ツアーが行われた。VICE MEDIAのInstagram視聴は49%増となり、TikTok上の動画は200万回も視聴されたという。元国連幹部のShashi Tharoor氏からの推奨もあった。

何百年も前に繰り広げられた過酷な歴史と、その展示品の地元への返還がなされないという長年の課題を、最先端テクノロジーであるInstagramのフィルターを活用して“アン”フィルターする(フィルターを剥がす)。

最先端テクノロジーの歴史への活用という意味でも、大変に興味深く、意義深い取り組みだ。

文=佐藤達郎

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