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ハンター歴40年、ミシュラン凄腕シェフが考える森との共生

パリのレストラン「ロワゾーブラン」のデビッド・ビゼ氏

そこは、天空のレストラン。まるで空に溶け込むような、背の高いガラス窓からは、パリのシンボル、エッフェル塔が見渡せる。まるで鳥になったかのような視野が開ける、そんな場所だ。

空に開けたこの店に輝く星は2つ。就任後早速店にミシュランガイドの2つ星をもたらしたデビッド・ビゼシェフは、この直前まで、この街の超有名店「タイユヴァン」を1つ星から2つ星に返り咲かせた敏腕シェフでもある。



ここは、フランスの中でも最も高い格式を誇る「パラス」に名を連ねるホテル、ザ・ペニンシュラパリのメインダイニングでもある。店名「ロワゾーブラン」は白い鳥という意味で、飛行機が大好きなオーナー、マイケル・カドゥーリー卿による、大西洋横断に挑んだ2人のフランス人パイロットへのオマージュだ。

店内には至る所に飛行機をイメージさせるオブジェや実物の部品が、そして店外には太平洋横断に使われた飛行機のレプリカが飾られている。飛行機という全く新しい乗り物に挑戦したパイオニア精神への敬意を感じることができる。

「森のサステナブル」を考える

ここで生み出される料理もまた、私たちに新たな視点を提供してくれる。島国の日本では近年注目を集めるようになった「海のサステナブル」に対して、「森のサステナブル」という視点だ。

実は、ビゼ氏は5歳の頃から家族に連れられて狩猟に出かけてきた。狩猟歴約40年のハンターでもあり、今も毎週末、2人の娘と共に故郷の村で狩猟をし、命の大切さを伝えている。そんなビゼシェフが大切にする、森を守り育てるための思想とアクションとは。

──自然に近い暮らしをされる中で、気づかれることも多いと思います。現在の自然環境について、どう思われますか?

昔と比べて、一つの大きな変化は温暖化でしょう。もちろん、物事は多角的に見ないといけませんから、まず良い面に目を向けると、これまで南フランスの一部でしか見られなかったある種類のトリュフを、他の地域でも目にすることができるようになりました。また、春の野菜とされてきたアスパラガスの収穫が1月から始まり、シャンパーニュ地方など北部でも栽培が可能になりました。

それにより、同じ食材でも、香りや食材、水分量などに多くのバラエティが生まれ、多くの選択肢の中から選べるようになったと思います。

マイナス面としては、気候変動のために絶滅しつつある生物がいるということです。ご存知のように、海の温暖化は魚に大きな影響を与えています。私は、魚も産卵期のヒラメやスズキは使いませんし、常に自然界のサイクルや個体数の変化をしっかりと観察して、食材を選ばなくてはいけないと思っています。

また、森でも、例えば、ヤマウズラ、キジ、ノウサギなどの小さな動物はますます少なくなっていて、狩猟を続けられる種と、狩猟をやめるべき種を慎重に検討する必要が出てきています。
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