企業に投資家が求めることは? PwC Japan木村代表に聞く

PwC Japan グループの木村浩一郎代表

経営者は、時代の変容に伴って次々と生まれる新たな課題に対し、スピード感のある対処を求められる。そのひとつがESG・サステナビリティだ。

複雑化する課題にどのように対処すればよいのか。情報開示の専門家でもあるPwC Japan グループの木村浩一郎代表に聞いた。

投資家が求めるのは「革新」

PwCでは、企業が直面する課題とニーズの本質を見定め、特に注力すべきフォーカスエリアを「ESG & Sustainability」「Data Analytics / AI Lab」「Deals Platform」「Digital Trust」「Risk & Governance」の5つに整理している。

このうち本連載のテーマでもある「ESG/Sustainability」について、経営者が注目すべき点とは。

まず前提として「ネットゼロ対応」があるという。気温上昇を1.5℃に抑えるために2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることを目標としている。そのためには世界では毎年15.2%脱炭素化を進めていく必要がある(ネットゼロ経済指標2022)。

「ネットゼロ経済指標2022」で行われたシミュレーションの図が興味深い。毎年15.2%の脱炭素化は、かなり困難を伴うだろう。


 

そして重要なのが、投資家だ。投資家は企業が収益を上げながらサステナビリティ課題に取り組むことを期待している。ただし、まずは「革新」を求めている(グローバル投資家意識調査2022)ことも分かっている。

 

投資家調査によると、「革新的」「収益性」「データセキュリティ」などが上位で、その次に温暖化対応が入る。ただし「革新的」にという項目には、環境問題を含む多くの問題への対処能力が含まれているのかもしれない。

非財務データからビジネス価値を生み出す

今日のサステナビリティ対応は、投資家による情報開示要請という点が、一昔前のCSRなどとは大きく異なる。

ESGを明確に打ち出した2006年の国連のPRI(国連投資原則)あたりから、財務情報のみならず非財務情報についても開示の要請が高まり、制度化が進んでいるからだ。

開示ルールの専門家としての木村代表の見立てでは、非財務情報の開示ルールは、比較可能性を求めて急速にルール化が進むという。一方、それぞれの企業の特色や社会のニーズがあるため、足並みを揃えてルールを確立するには、ある程度の時間がかかるとみられる。
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文=笹谷秀光 撮影=小田光二

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