「ガチ中華」を気軽にディープに楽しむための4つの心得

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海外から来た中国語圏の人たちが都内にオープンさせた、故郷の地方料理や最新の母国の外食トレンドをそのまま持ち込んだ中華料理の店が急増している現象を、筆者は「東京ディープチャイナ」と呼んできたが、いまではその料理のジャンルが「ガチ中華」と呼ばれ、知られるようになっている。

前回の記事で、その「ガチ中華」が、とりわけ21世紀以降に来日した豊かな世代が担い手となることでますます多様化しているとお知らせしたが、それゆえにただでさえ、未知なる領域だった料理のジャンルが増えたことで、店やメニュー選びでハードルがさらに高くなっているという声も聞かれる。

そこで今回はそんな「ガチ中華」をなるべく気軽に、そしてディープに楽しむための心得を、初級者向けからマニア向けまで4段階に分けて紹介してみたい。

JR新大久保駅の山手線外側の大久保通り沿いには、多国籍な飲食店が連なっている。左から「天下寿司」、中国吉林省延辺朝鮮族自治州の料理店「千里香」、ネパール居酒屋「ナングロ」、ジャンクな鴨肉の四川風煮込みの店「小魏鴨脖(シャオウェイヤーボー)」

JR新大久保駅の山手線外側の大久保通り沿いには、多国籍な飲食店が連なっている。左から「天下寿司」、中国吉林省延辺朝鮮族自治州の料理店「千里香」、ネパール居酒屋「ナングロ」、ジャンクな鴨肉の四川風煮込みの店「小魏鴨脖(シャオウェイヤーボー)」

自分の好みにたどりつくためには

(初級編)おすすめ料理は何かを聞こう

「ガチ中華」の店のテーブルにはたいてい分厚いメニューが置かれており、驚くほどたくさんの料理が載っている。中華の料理人にとって多くの料理がつくれることは、一種のステータスであり、幅広い客層に喜んでもらえると彼らは考えている。とはいえ、選ぶほうとしては、そのなかから自分好みの味へとたどりつくのはたやすいことではない。

であれば、そのような悪あがきはひとまずおいて、店の人におすすめ料理は何かと聞けばいい。旅先にいるときのような、なんでも体験し、受けとめてやろうというまっさらな気持ちになって、その場に身を任せることが「ガチ中華」を楽しむ第一歩ともいえる。

池袋の上海料理店「大沪邨」のある日のおすすめメニュー(推荐菜)

池袋の上海料理店「大沪邨」のある日のおすすめメニュー(推荐菜)


いまどき「ガチ中華」の店で、「日本語がうまく通じるだろうか」という心配はまずないといっていい。あるとすれば、多くの中国人のスタッフにとって、日本人の客が「ガチ中華」についてどこまで理解しているのかわからないため、何を説明すればいいか推し量れずに、言葉に詰まるケースだ。異国の人たちとの相互理解の難しさは、日本語の問題よりも、たいていこういうところ、すなわちベースとなるお互いの知識量の違いを手探りしなければならないことにある。

また、昨今の飲食業界は慢性的な人手不足のため、「ガチ中華」の店でも、ベトナムやネパールなどの人が働いているケースが増えている。彼らは日本人と同様、「ガチ中華」の料理に詳しいとは限らない。

まずは店長クラスの人に聞けば、おすすめ料理について、喜んで教えてくれるだろう。なぜなら、店を訪ねてくれた日本の人たちに自分たちの愛する料理を食べてもらえるのは、彼らにとっても嬉しいことだからだ。それはわれわれが日本を訪れた外国の人たちに和食を食べてもらうときの心持ちといっしょなのだから。

ちなみに中国語で「おすすめ料理」は「推荐菜(トゥイジェンツァイ)」という。
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文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会

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