オフィスが渋谷にあることもあってか、訪日外国人客が日に日に増えていると感じる。日本政府観光局が発表した数字を見ても、昨年1月が1万7000人ほどだったのに対して、今年の1月は149万人以上となった。コロナ禍前である2019年の268万人以上には満たないが、急激な回復率と言えるだろう。シンガポールやベトナムからの訪日客数に限って言えば、今年始めの時点ですでに2019年の数字を上回っている。まさにすごい勢いだ。
これまで、こうしたインバウンド需要を見込んで、さまざまな企業や業界が積極的な取り組みを続けてきたことは言うまでもないだろう。
東京オリンピックに向けて急ピッチで加速させていたところに、パンデミックによる急停止となったわけだが、私はここからインバウンド需要が一気に再開し、受け入れる側の方法も進化を遂げていくのではないかと考えている。
コロナ禍を経たここ3年ほどで、人々の生活様式は一変した。オンライン会議が当たり前となり、動画サイトやSNSなどのプラットフォームやサービス利用者は激増した。重要なのは、インターネットがより深く日常生活に浸透したなかで、日本がこれからインバウンド需要の大きな復活時期を迎えるという点だ。
「旅マエ・旅ナカ・旅アト」という言葉がある。これは観光マーケティングによく用いられる言葉で、この3点でいかに客を取り込むことができるかが、市場拡大の肝となる。そしていま、この「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の生かし方に大きな変化が起きているのだ。
以前から、観光客が「旅マエ」や「旅ナカ」で、動画サイトやSNSで情報収集する行動自体はあったが、いまや「当たり前」で欠かせないものとなった。
先日銀座にあるすし屋に行ったのだが、開業したばかりにもかかわらず客の大半が外国人客で驚いた。その理由を尋ねてみると、使っているネタの名前を店主がインスタグラムに英語で頻繁に紹介したところ、ひっきりなしに外国人客からの予約が来るようになったのだという。
「旅アト」についても、これまでは滞在中に利用したホテルや飲食店などに対する口コミ投稿を促す程度で、なかなかその機会を深掘りしきれていなかったように感じる。