これまで70人以上の終身雇用の教授が来てくれています。例えば、プログラムの期間は、外部からCEOを引き入れて会社を運営してもらい、教授はコースに参加するということもあります。昨年ノーベル化学賞を受賞したキャロライン・ベルトッツィは、StartXの教授プログラムに参加し、彼女が創業したインターフェースバイオサイエンス社を発展させました。
──日本の大学では、経営者を探すことの重要性が議論されています。それもStartXの重要な役割でしょうか?
StartXでは、人材に関する活発な情報交換が行われています。StartXの卒業生の100人以上が成功裏にエグジットしています。彼らはエグジット後に別のスタートアップに入ったり、再び起業したりして、さらにネットワークを広げています。こうした人たちのネットワークに関する情報が、経営者を探すうえではとても役に立ちます。
他の起業コミュニティとの違い
──これまで何人かの学生にインタビューしたところ、スタンフォードでは起業支援に力を入れているが、ほとんどの学生は起業家にならないとのことでした。スタンフォードでの活動の多くは、起業に至らずプロジェクトの段階で消滅します。学生には起業以外にも成功する道筋はたくさんありますので、それはそれでよいのです。一方、StartXは、起業家だけが集まっていて、参加者に強いコミットメントを求めています。従って、真剣に成功しようとする起業家や、成功する起業家を探している人々にとって、StartXは魅力的な場所であると思います。
StartXがプログラムを通して提供するのは、メンターシップ、コミュニティ、教育、リソースの4つです。リソース面では、AWSなどのパートナーが、スタートアップに役立つサポートサービスを提供しています。また、LG、ダイキン、CSLといったフォーチュン500に選ばれるような世界的な優良企業が、StartXコミュニティを通じて、イノベーションに向けて取り組んでいます。
──ダイキンはどう関わっていますか?
同社とは5年前に、ダイキン・シリコンバレー(DSV)オフィスを通じてパートナーシップを結びました。コンフォートテックやエネルギーマネジメントの分野で、多くのStartX参加企業がダイキンと連携しています。
さらには、我々はさまざまなエコシステムを繋げようとしています。例えば、カザフスタンのトップ大学であるナザルバエフ大学のジャストベンチャーと呼ばれる組織が、トップクラスのスタートアップを輩出しているのですが、そこと提携関係を結びました。
起業家の成果はチャンスの差に左右されることが多くあります。世界の他地域のスタートアップがStartXプログラムに参加する機会を得られたら、それは大きな価値になるでしょう。
例えば、フランスで初めてFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を取得した会社は、StartXを経由して認可を得ることができました。