世界の「暗号通貨長者」が一転苦境に 1年で富14兆円失う

詐欺などの罪で起訴され、裁判手続きのためニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁に出廷したFTXの創業者、サム・バンクマン・フリード被告(2023年3月30日、Michael M. Santiago/Getty Images)

フォーブスが先週発表した2023年版「世界長者番付」では、暗号資産企業で財を成した富豪の苦境も浮き彫りになった。

昨年の番付で資産額10億ドル以上のビリオネアに名を連ねていた富豪たちは、この1年で富を合計で1100億ドル(約14兆6000億円)失った。相次ぐ不正疑惑やそれに対する当局の調査や提訴、内輪もめ、資産価値の下落などが重なって脆弱な業界の傷が深まり、創業者らの資産にも大きく響いた格好だ。
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2022年版の番付では暗号資産分野から過去最多の19人が選ばれ、合計資産額は1400億ドルにのぼっていたが、彼らの資産額は最新ランキングを作成した2023年3月10日時点で300億ドル足らずにまで減っている。うち10人はビリオネアの座から脱落した。

とくに激しい転落になったのが、暗号資産取引所の大手だったFTXの創業者サム・バンクマン・フリードだ。1年ほど前、FTXは新たに4億ドルの資金を調達し、320億ドルの評価額を得た。これにともない、バンクマン・フリードの純資産額は240億ドルに膨らんだ。だがFTXは昨年秋に連邦破産法11条の適用申請に追い込まれ、バンクマン・フリードの資産も無きに等しいものになった。彼はその後、詐欺などで米当局に起訴されている。
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CoinMarketCap(コインマーケットキャップ)によると、暗号資産の時価総額は2023年3月までの1年間でおよそ7000億ドル(約93兆円)減り、1兆ドルに縮んだ。これに金利の上昇や投資家によるテック分野からの資金引き揚げも重なり、非公開の暗号資産スタートアップの評価額は落ち込んだ。暗号資産業界では、昨年夏にヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタルが経営破綻して以降、連鎖的に動揺が広がり、11月のFTX崩壊で頂点に達した。これをきかっけに米当局は暗号資産に対する広範な取り締まりに乗り出し、業界の富豪たちも無傷ではいられなかった。

暗号資産取引所Binance(バイナンス)の創業者チャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)はなお業界一の富豪だが、資産額は1年前の650億ドルから105億ドルに激減した。バイナンスとジャオは先月、米国のコンプライアンス規制を回避したとして米商品先物取引委員会(CFTC)に提訴されたほか、米司法省もマネーロンダリングや脱税の罪で訴追することを検討していると伝えられる。さらに、米証券取引委員会(SEC)も調査を進めていると昨年報じられている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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