シュミットはオーストラリアの新聞Australian Financial Reviewのインタビューで「6カ月の一時停止は、単に中国を利することになるため、賛成できない」と語っている。
彼は、AI分野で中国が米国の先を行くことを懸念する一方で、AIツールには大きなマイナス面があることも認識している。しかし、彼は、AIには「適切なガードレール」が必要だとしながらも、現在、政府にいるほとんどの人が、その発展を適切に規制できるほど技術を理解していないことを強調した。
OpenAIが作成したChatGPTのようなツールは、まるで人間のような自然な会話でユーザーの疑問に答えてくれる。しかし、専門家は起こりうるマイナス面を懸念している。
例えば、何人かのジャーナリストが、AIツールとの奇妙なやり取りを報告している。ニューヨーク・タイムズのKevin Roose記者は、2月にマイクロソフトのBingチャットボットとの会話の中で、彼が自分の妻を愛していないとチャットボットが主張しはじめた経験について書いている。そのチャットボットはさらに、核兵器の機密情報を盗みたいと密かに思っていることを告白したという。
シュミットは、AIツールが米国に敵対する勢力に利用され、プログラマーが設置したガードレールを取り払ってしまう可能性があると指摘した。
「例えば、北朝鮮がこのツールを使ってサイバー攻撃を仕かけようとしたとしよう。その場合、彼らはAIツールに設けられた『サイバー攻撃について話してはならない』といったルールをシステムから取り払うだろう」と、シュミットはAustralian Financial Reviewに語っている。
マスクらの主張にもかかわらず、OpenAIなどの高度なAIツールに取り組んでいる企業が、AI開発を一時停止するような動きは起きていない。テスラを支えるオートパイロットなどの最先端テクノロジーも、間違いなく高度なAIを活用したものだ。だからこそ、開発の一時停止を求める声には懐疑的な目を向けるべきだろう。
AIは、私たちが見たことのない方法で世界を変える力を持っている。そして、それは、私たちが準備できているかどうかにかかわらず、やってくるのだ。
(forbes.com 原文)