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2023.04.13 09:00

「1200年続く伝統を残す」カルチャープレナーの未来の書き換え方

京都を拠点にブランド「レナクナッタ」を展開する大河内愛加(写真=渋谷美鈴)

「柳行李」最盛期の大正時代には、アメリカなど海外にも輸出され、豊岡を中心に城崎や出石一帯で5000人以上の人が生産に携わっていたとされる。
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現在、豊岡杞柳細工の伝統工芸士(国指定)は9人。うち8人は60代以上で高齢化が進んでいる。

山本は50歳だが、中堅の職人。8年前に「後継者育成教室」に通い始め、作品展では3年連続で市長賞に選ばれるなど技術は評価されているものの、伝統工芸士になるためには産地で12年以上の経験を積む必要がある。工芸士として自立するまでにその道を諦めてしまう人も少なくない。

かごを編む豊岡杞柳細工職人 山本香織

かごを編む豊岡杞柳細工職人 山本香織


また、生まれも育ちも豊岡市という山本ですら、豊岡杞柳細工の魅力を知らなかった。子どもが中学校を卒業したタイミングで、時間的にも余裕ができた頃。友人の営む鞄屋で、豊岡杞柳細工のバッグと出会い、衝撃を受けた。専業主婦から工芸の世界に転身したのだ。
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「身近にこんなに美しいものがあったことを知り、びっくりした。私にとって運命的な出会いで、工芸の世界に飛び込むことに迷いはありませんでした」

豊岡は柳行李の歴史をルーツに、カバンの生産量が国内最大規模。2005年には商店街を「カバンストリート」と銘打ち、豊岡鞄を地場産業として発信している。それでも、豊岡杞柳細工は身近な存在ではなかった。いま、この伝統工芸を巡って何が起きているのだろうか。カルチャープレナーである大河内のアプローチとともに紐解いていきたい。

課題1. 作り手の減少

山本は8年前、手仕事として技術を身に着けるため「後継者育成教室」の門を叩いた。だが、周りには趣味として編み方を習い始めた人が多く、温度差を知ることに。熱意を胸の内に秘めて、技術の習得に励んだ。教室に通い始めて数年目になると、柳を育てる必要がある。そこでやめてしまう人が多かった。

柳は春に芽が出て冬には2、3メートルほどに伸び、葉っぱが落ちると刈り取る。自分より背の高い柳をかき分け、綺麗に生育するために行う「芽かき」という作業は、重労働だという。 

2、3メートルほどに成長した柳をかき分ける「芽かき」の作業

2、3メートルほどに成長した柳をかき分ける「芽かき」の作業


刈り取った柳を田んぼやバケツにはった水につけておくと、春には「猫柳みたいなふわふわに」なり、葉が出てきて4月ごろに皮が剥けるように。自然乾燥させ、白く輝くバッグの材料「白柳(しろ)」が出来上がり、土用の丑ごろに使えるようになる。

そこから、編むかばんに合わせて加工が始まるのだ。鉛筆より太い柳を4つに割り、中身を削ぎ落としてなめらかな表面だけを使う。編み始める前に天候を考慮して数時間水に漬け、それから2、3日かけてバッグをひとつ編むことができる。レナクナッタのYouTubeでは、その細やかな手仕事の様子を動画で紹介している。



 山本は「すべて自給自足のため、現状では1年で育てた柳は全て使い切ってしまうんです。分業として柳の育成を委託できればいいんですが」と頭を抱える。「仕事として成り立たせることができたら、若い人や子育てを終えた人などがもう少し、この世界に入りやすくなると思います。手仕事が好きな方はたくさんいらっしゃると思うので」
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文=督あかり

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