「ありのままの自分で」NZ前首相の最後の演説から学ぶリーダーシップ

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リーダーがどのように導くか、どうあるべきかについてさまざまな考えがあるなかで、ジャシンダ・アーダーンはありのままの自分でいるよう説いた。

ニュージーランドの前首相であるアーダーンは4月5日、議会で説得力のあるすばらしい退任演説を行った。同国の先住民マオリ族のマントを羽織って登場したアーダーンはマオリ族に敬意を表してマオリ語で演説を始めた。アーダーンは首相という役割の責任と特権について語った。そして、自分がいかに物議をかもしたかについても説明責任を果たした。

最も重要なことに、アーダーンは自分が達成した物事のなかで誇りに思っていることをはっきりと述べ、その成功に手を貸した人たちの名前を挙げて称えた。アーダーンは力を貸してくれた人たちを見て、感謝の気持ちを込めて満面の笑みを浮かべ、いっしょに成し遂げたことの概要も併せて述べた。

「太平洋諸島の人々への差別について、ついに謝罪の意を示したことが、そうした地域の人々にとってどのような意味を持つのか私たちは知る由もない。軍仕様の半自動小銃の販売禁止によって救われる命のリストを目にすることはないだろう。この議会が人工妊娠中絶を非犯罪化したことで、自ら選択する能力について女性たちにどのような思いを抱かせたか私たちにはわからない。あるいは、賃金の公平性を改善したとき、国会における女性の割合が50%に達したときもそうだ。これらを達成したことを、私はとても誇りに思う」

首相として直面した悲劇については、それがいかに自身を謙虚にさせ、仕事に集中させたかを語った。悲痛な出来事から国が先に進まないのか、あるいはそうした出来事が国の一部となるのかと。

アーダーンは自身の母親が自分に送ってくれた励ましの言葉を、あまりにも大袈裟だと思った1つの言葉をのぞき、時に自身のスタッフと共有していたことも話した。伝えなかった言葉は「イエスにだって、彼を嫌う人がいたことを忘れないで」というものだった。

アーダーンはやり残したことを語り、次世代のリーダーたちにその仕事を引き継ぐようメッセージを送った。ユーモアと個人的なエピソードを交え、会場全体が笑いに包まれることも度々あった。アーダーンは私たちが学ぶべきいくつかの心に響く視点を共有してくれた。その1つが「リーダーシップとは常に進歩のことであり、それを測ることができるときもあれば、できないときもある」というものだった。そして「私がここで何をしたにせよ、決して1人でやったわけではない」と語った。
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翻訳=溝口慈子

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