世界一の生産量を誇るのが、スマートフォンやパソコン、ゲーム機のコンデンサなどに使用されている「タンタル」。全生産量の43%がコンゴ民のものだ。また、モバイル機器や電気自動車のリチウムイオン電池に欠かせない「コバルト鉱石」は全生産量の68%を占める。他にも、産業に欠かせないスズ、銅、金、ダイヤモンド、ウラン、石油なども産出する資源に恵まれた国である。
しかし1人あたりの「GNI(国民総所得)」は207カ国中200位、国の本質的な豊かさを示す「人間開発指数」は191カ国中179位と、国力は開発途上国の中でも下位だ。
最大の要因は、国土に眠る豊富な天然資源を巡って国外勢力の関与が続き、常に国が混乱状態にあることだ。現在も、鉱床が多い国内東部には100を越える武装組織が乱立しているといわれる。
隣国のルワンダやウガンダをはじめ欧米諸国がそれぞれの関与を非難し合っているものの、実際のところ「そこで誰が何をしているのか?」は霧の中だ。
なぜ「血」が流れ続けるのか
始まりは19世紀後半、当時ベルギー国王だったレオポルド二世による私有地化だった。1885年に「コンゴ自由国」と名付けられた同地では、現地の人々を奴隷化し、産業革命を経て急速に需要が高まっていたゴムの採取が行われたのだ。1908年には、世界各国からの非難を受け、ベルギー国会がレオポルド二世から同地を購入し、ベルギーの植民地となる。
その後、“アフリカの年”と呼ばれる1960年に他のアフリカ諸国と肩を並べ独立を果たした。
しかし、同国有数の鉱物資源が眠る南東部のカタンガ州が、ベルギー軍および鉱業会社の後ろ盾を得て独立を宣言。独立後わずか1週間で内乱状態となる。
当時は東西冷戦時代真っ只中。その影響もあり、多国籍傭兵部隊や国連軍など、多種多様なアクターが介入していた。そして1965年、独裁者として悪名高いモブツ氏がクーデターで大統領に就いた。
その悪政は衆目の事実だったが、米国を筆頭に西側諸国は東西冷戦に及ぼす影響を恐れ、総額約85億米ドルの助成金や融資を行い続けた。その結果、モブツ氏は貧困に苦しむ国民を顧みず、在任中に10億~50億米ドルの不正蓄財をしたといわれている。
1997年には、第2代大統領となるローラン・カビラ氏が、隣国ルワンダとウガンダの協力を得て第1次コンゴ戦争(1996年11月から1997年5月)に勝利し、モブツ政権を打倒した。
しかし翌1998年、政権奪取に大きく寄与した隣国ルワンダ系の民族であるバニャムレンゲ排除をカビラ氏が試みたことを引き金に、ルワンダとウガンダを含む8つの周辺諸国と20を越える武装勢力が入り乱れる第2次コンゴ戦争(1998年8月~2003年7月)が勃発。500万人以上の死者と100万人以上の難民を出した。
つまり独立以来、コンゴ民では国民の間で富と権力を巡って血が流れ続けている。ただ、その混乱の背後には常に国外勢力の姿が見え隠れしているのだ。