経済

2023.04.13

【ルポ】血が流れ続けるコンゴ民主共和国 「鉱物」をめぐる争いのいま

霧が立ちこめるルウェンゾリ山地の朝

現地で目の当たりにした武力組織の組織力

本当に、鉱物が武装組織の資金源になっているのか。

昨年11月から今年2月のアフリカ取材で、ウガンダとコンゴ民の合同ADF(民主同盟軍)討伐ミッション「Operation Shujaa」に同行する機会があった。
スタックからの脱出はロシア製六輪駆動トラックによる牽引が必須

スタックからの脱出はロシア製六輪駆動トラックによる牽引が必須


四輪駆動のピックアップトラックと悪路の運転に慣れているウガンダ人ドライバーと共に、ウガンダ軍の車列に加わる形でコンゴ民東部に入ったのだが、環境の厳しさは噂を超えるものだった。

粘土質の土からなるアップダウンが多い道は、少しの泥濘で簡単にタイヤのグリップ力が奪われる。私の車だけでなく重量が10トン前後のウガンダ軍の装甲兵員輸送車やMRAP(耐地雷伏撃防護車両)も頻繁に走行不能に陥り、その度に悪路走破性最強ともいわれるロシア製六輪トラックによる牽引を要し、20kmの移動に10時間以上を要した。
ペットボトルに入れて売られているガソリン

ペットボトルに入れて売られているガソリン


また道中点在した民家は土壁の非常に粗末なつくりで、ガス・水道はおろか電気もなかった。日が落ちると500人規模の村ですら、ところどころに灯るアルコールランプの光りでかろうじて人の営みが確認できる状態だった。人々の移動は泥濘から自力で脱出が可能なバイクが主だが、ガソリンスタンドなど存在しないため、ガソリンはペットボトルに詰めて路上で販売されていた。

つまり、一国の正規軍ですら移動に多大なコストと労力を要し、燃料も簡単に手に入らない環境下であるのに、ADFやM23といった武装組織は大規模な作戦や戦闘行為を行う組織力があるのだ。

ウガンダ軍将校によると、ADFからの鹵獲品(ろかくひん)の中には、民間用ドローンとPCがあったという。武器弾薬と異なり、車を動かす燃料やドローン、PCの充電に必要な電気は、戦闘時以外でも常に消費するものだ。そのためウガンダ軍は水と食料に加え燃料も頻繁にウガンダから運び込んでいた。コンゴ民東部に設置された「Operation Shujaa」のベースキャンプには大型の発電機も設置していた。

コンゴ民東部に存在する100を越えるゲリラの中で少なくともADFとM23は、武器弾薬や電子機器および燃料に関して外部からサポートを受けているか、購入していることは間違いない。そしてその見返りや支払いに、不法に採取・採掘されたコンゴ民の天然資源が用いられているといわれている。
 ADFに武器を運搬していた容疑で逮捕された男性たち

ADFに武器を運搬していた容疑で逮捕された男性たち


反政府武装組織の性質上、政府軍の目から逃れて補給を行う必要があるADFとM23にとって、陸路であれ空路であれ物資の輸送には多大なコストと労力が必要となるからだ。両組織の規模から単独ですべて賄うことも不可能である。

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文・写真=下村靖樹

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