経済

2023.04.13

【ルポ】血が流れ続けるコンゴ民主共和国 「鉱物」をめぐる争いのいま

霧が立ちこめるルウェンゾリ山地の朝

鉱物が武装組織の資金源に

現在コンゴ民で最も不安定な地域は、首都キンシャサから1500kmほど離れた、ルワンダ、ウガンダ、南スーダン、ブルンジと国境を接する東部地域だ。
小学校と標高5109メートルのマルガリータ山

小学校と標高5109メートルのマルガリータ山


アフリカ大陸で3番目に高い5109mのマルゲリータ山を筆頭に、4000mを超える山々が連なるルウェンゾリ山地と森林地帯が広がる。道路事情が劣悪であるため、人の移動には多大な労力を要する地域だ。

そのため政府の目が届きにくく、モブツ政権を打倒したローラン・カビラ氏が反乱ののろしを上げたのもこの地域だった。

そしてこの地には、金・ダイヤモンド・タンタルなど、様々な勢力にとって垂涎の的である天然資源が豊富にある。第1次、第2次コンゴ戦争時にはウガンダとルワンダを筆頭とする国外勢力や外国企業と結託したコンゴ民人により、不法に金、タンタル、ダイヤモンド、木材などが国外へ持ち去られ、現在も武装組織の資金源になっている。
ヴィルンガ山地は絶滅危惧種マウンテンゴリラの生息地でもある

ヴィルンガ山地は絶滅危惧種マウンテンゴリラの生息地でもある


紛争地で採取・採掘される鉱物が武装組織の資金源になっていると世間一般に広く知れ渡ったきっかけは、ハリウッド映画「ブラッドダイヤモンド」だろう。映画自体はフィクションだが、実際に1980年頃から西アフリカの内戦でダイヤモンドが武器調達の資金になっていると問題視されていた。

映画公開の3年前、2003年には国連決議により、ダイヤモンド原石の輸出入において“紛争ダイヤモンドでないこと”の証明を必要とする「キンバリープロセス証明制度」が締結されている(現在は形骸化しているとの非難も多い)。

他の鉱物に関する規制は遅れ、2010年にやっとOECD(経済協力開発機構)がスズ、タングステン、タンタル、金を紛争鉱物に指定した「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を策定した。

このガイダンスをもとに、同年米国で、コンゴ民及び隣接国産の紛争鉱物「3TG(スズ、タンタル、タングステン、金)」のトレーサビリティーを義務づけるドッド・フランク法が制定された。対象は、米国証券取引委員会(SEC)に報告書を提出している米国企業及び外国企業である。さらに欧州連合でも2021年同様の内容で紛争鉱物取引規制が開始された。
ADFへの砲撃の準備をするウガンダ軍

ADFへの砲撃の準備をするウガンダ軍


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文・写真=下村靖樹

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