食&酒

2023.04.16 08:00

欧米で「WAGYU」人気が拡大、一般の間にも浸透

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私の記憶にある限り、「WAGYU(和牛)」と言えば高級食材の代名詞で、「牛版のキャビア」「肉好きのグルメにとってのシャンパン」に相当する存在だった。だが私は最近、ロンドン郊外のショッピングモールで初めて和牛専門のレストランに出くわし、自分の目を疑った。

このレストランは、閑散としたゲームセンターとさびれた映画館のあいだに店を構えていたのだが、それにしてはあまりにきらびやかで高級だったので、すぐに「この店は失敗に終わる」という考えが脳裏をよぎった。市場やエリアの特性を見極めずに出店した、志だけは高いレストランの「コンセプト店舗」なのだろうと決めてかかったのだ。

だがそんな予想とは裏腹に、この店は繁盛していた。どのテーブルを見ても、ドレスアップした客が和牛ステーキにナイフを入れ、赤ワインを飲みながらにっこりと笑い、高額の食事を楽しんでいた。失敗などではなく、これはまさに、時流に乗ったビジネスだったのだ。

日本産牛肉は牛海綿状脳症(BSE)への懸念から長期にわたって欧米諸国への輸出が禁止されていたが、2010年代に輸出が解禁されて以降、和牛は業界を席巻している。

この躍進に大いに貢献しているのが、JETRO(日本貿易振興機構)内の組織である日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)だ。JFOODOは2017年、ブランディング、プロモーション、輸出拡大支援活動を通じた日本産の農林水産物や食品の国際競争力強化を目的に創設された。

この取り組みは、着実に成果を挙げている。シェフやスーパーマーケット、フードライターをはじめとする食のエキスパートたちとのパートナーシップにより、レストランチェーンのハンバーガーから、バーベキュー用の精肉パックまで、実際に和牛を至るところで見かけるようになった。

この積極攻勢によって、和牛がどういうものか知らない人も、食べてみたいと思うようになったのだ。

和牛は単なる牛肉の1カテゴリーであることを考えると、これは実に目覚ましい成果だ。和牛は、美しい霜降り(サシ)、豊かな風味、とろけるような柔らかさという特徴を持っているが、それでも牛肉の1カテゴリーであることに変わりはない。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ・編集=遠藤宗生

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