この事件をきっかけに、尹大統領もさらにこれまでの姿勢を強化して、捜査を所轄の警察署からソウル警察庁の麻薬捜査隊へと移管した。昨年、「麻薬との戦争」を尹大統領が掲げた時は、あまり身近に感じなかった韓国の人たちも、今回の事件ではかなりショックを受けたようだ。
国際麻薬組織の集中攻略対象に
実際、このところ韓国では、財閥の子息や有名芸能人から、一般の高校生など青少年にいたるまで、麻薬で摘発された事件の報道は多くなっている。韓国の麻薬犯摘発件数は、昨年は1万8395人と歴代最多を記録した。前年の2021年に比べ13.9パーセントも増加している。今年も、1月と2月だけで、すでに2600人が摘発されている。昨年の同期間に比べ32.4パーセントも増えている。また同時期に押収された麻薬の量も112.4キログラムから176.9キログラムと57.4パーセントも増えた。
いまや麻薬犯罪の手法も、スマホやSNSを駆使しており、最近のトレンドなのか、最近は麻薬取引のやり方をテレグラムなどに投稿すると次から割引があるなど、使用者の承認欲求を満たす販売の仕方もあるという。
また、韓国では麻薬が米国や東南アジアより5倍から10倍も高い価格で取引されているため、市場として国際麻薬組織の集中攻略対象になっているという分析もある。
これまで韓国では、「麻薬キンパ」とか「麻薬タッパル(鶏の足)」とか、食べ物の名前に「麻薬」を付けることが多かったが、それは別に麻薬が入っているわけではない。しかし、この名称の付け方も、昨年の国会で「有害薬物や有害物質と関連した表現」を食品の名称にしてはならないという改正法案が提出された。
ちなみに、韓国政府の行政安全部のデーターシステムによれば、昨年営業中の一般飲食店のうち「麻薬」という言葉が入った商号は199もあった。とはいえ、韓国の店名や食品名に「麻薬」と書いてあっても、いまのところは「美味しい」と言う意味なので、間違いのなきように。