米国では昨年、中絶を憲法で保障された権利として認めた「ロー対ウェイド」判決が連邦最高裁により覆されて以降、中絶を禁止する州が相次いでいる。こうした中、民主党はミフェプリストンの利用制限の動きに反発。一方で、共和党はテキサス州裁判所の決定を歓迎している。
ミフェプリストンをめぐっては、中絶に反対する市民団体が昨年11月、認可の取り消しを求めて食品医薬品局(FDA)を提訴。トランプ前大統領により任命されたテキサス州連邦地裁のマシュー・カズマリク判事はこれを受け、認可の一時差し止めを命じつつも、連邦政府が控訴できるよう、命令の施行を1週間保留した。
民主党陣営は猛反発
バイデン大統領は声明で、認可差し止めは「女性から基本的な自由を奪い、女性の健康を危険にさらす」ものだと批判。司法省が「すでに控訴した」ことを明らかにした。メリック・ガーランド司法長官は別の声明で、司法省は差し止め命令に「強く反対する」と表明。差し止め命令は、ミフェプリストンが安全で有効であるという「FDAの専門家の判断を覆す」ものだとし、連邦政府が同薬を使用し続けられるようにする方法を模索していると説明した。ハビエル・ベセラ厚生長官もまた、保健福祉省は認可差し止めと「徹底的に闘う」と表明している。
民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、「共和党が目指す全国的な中絶禁止への大きな一歩であり、わが国を混乱に陥れかねない」と指摘。カマラ・ハリス副大統領は、今回の裁判所判断は「前例がない」もので、「全国の女性の権利を脅かす」と述べた。
一方、ブルームバーグによると、共和党のマイク・ペンス前副大統領は差し止め命令を歓迎し、「今日、生命が再び勝利した」と表明。FDAがこの薬を承認したことで、「人命と米国人女性の健康を軽視し、不注意な行動をとった」と主張した。同じく共和党のシンディ・ハイド・スミス上院議員(ミズーリ州選出)も、認可差し止めは「妊娠中の母親とその胎児にとって勝利である」と述べた。
ワシントン州ではこの日、民主党のオバマ元大統領が任命した連邦判事であるトーマス・ライスが、17州とコロンビア特別区からの要請を認め、FDAに対してミフェプリストンの利用を制限するような変更を加えることを禁ずる命令を出している。これはカズマリク判事とは逆にFDAの認可を事実上肯定するものだが、両判事の命令が互いにどう影響するかは不明だ。ガーランド司法長官は、司法省がライスの命令についても精査すると述べている。