バイデン政権の当局者は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、Twitter(ツイッター)やTelegram(テレグラム)で拡散された文書に、ロシア軍への反転攻勢に備えてウクライナ軍を増強するための米国と北大西洋条約機構(NATO)の機密計画の詳細が記されていることを認めた。ただし、当初は正規の文書かどうか不明だったとしている。
米高官がニュースサイトのポリティコに認めたところによると、問題の文書は本物で、米軍統合参謀本部が作成した。だが、米国が推計したウクライナ側の死者数を誇張し、ロシア側の死者数を過小評価するなど、不正な改竄の後がみられるという。
ニューヨーク・タイムズによれば、文書は5週間前に作成されたもので、ウクライナ軍の反転攻勢に何が必要となるかについて、1カ月前時点での情報が記されている。具体的な戦闘計画は記載されていない。
文書の中には、米国がウクライナ軍に供与したロケット砲システムの弾薬消費量や、今後供与される武器の写真、部隊・大隊の戦力などが記されたものもあるとされる。
英紙フィナンシャル・タイムズによると「最高機密」と明記された文書はウクライナ東部バフムートで続く戦闘を概説し、別の文書は来るべき反転攻勢に関連してウクライナ軍の部隊を列挙していた。これについてウクライナ軍顧問は、これらの情報は機密ではないとの見方を示した。
軍事アナリストらは英紙タイムズに対し、一連の文書には機密やタイムリーな情報は記載されていないものの、情報漏洩は米国の情報活動における重大な違反であり、ウクライナとの情報共有に悪影響を及ぼす恐れがあると指摘している。
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問はテレグラムへの投稿で、問題の文書について「はったりにすぎず、目に入ったゴミだ」と一蹴。ウクライナの反転攻勢に「影響を与える」ためにロシア当局が公開したものだと示唆し「実際のウクライナの計画とは関係ない」と主張した。ウクライナ政府は7日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が軍関係者と会合を開き「国防軍の計画に関する情報漏洩」の防止策について協議したと発表した。
一方、ロシア政府とつながりのある民間軍事会社ワグネル・グループ系のテレグラム・チャンネル「Grey Zone(グレーゾーン)」は、一連の文書はウクライナがロシア軍司令部を「惑わすため」に流した「偽情報」だと主張している。ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は米CNNテレビに送った声明文で、文書に直接言及はしなかったが「ロシアとウクライナの紛争に米国とNATOが関与していることに微塵の疑いもない」と述べた。
文書の流出させ改竄したのが何者かは不明。ロシアとウクライナは互いを非難している。米ホワイトハウスは本件についてまだ反応していない。
(forbes.com 原文)