チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、3月の人員削減数は8万9700人と2月から15%増え、前年同月に比べると319%増えた。
こうした増加は、米国での人削削減が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)の初期以降、みられなかった高い水準に近づきつつあることを示している。
1〜3月の人員削減数は、パンデミック初期の2020年1〜3月に比べると約7万6300万人少なかったものの、それ以降ではこの時期として最多だった。サブプライム住宅ローン危機の渦中だった2009年1〜3月に比べると30万8100人少ない。
1〜3月の人員削減数のうち38%はテクノロジー業界のもので、業種別では群を抜いて多かった。Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Meta(メタ)といった大手が昨年末以降、いずれも1万人を超える従業員を解雇しており、業界全体の動きを方向づけている。テック業界の人員削減は昨年秋ごろから急増しており、このままのペースなら今年通年では2001年の16万8400人を上回り過去最多を記録する見通しとなっている。
業種別で人員削減数が次に多かったのは金融で、全体の11%を占めた。
チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは、1〜3月の人員削減の半分超は市場や景気の状況に原因があると分析している。テック企業はパンデミックの発生後、巣ごもり需要で恩恵を受けたが、生活の平常化にともない成長が鈍り、軌道修正を余儀なくされている。また、ウクライナでの戦争や米銀2行の経営破綻、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続も企業によるコストカットの動きを強めている。
一方、米労働省が6日に発表した失業保険統計(季節調整済み)によると、失業保険の申請数も増えてきており、前週分は以前の発表から4万8000人上方に改定された。こうした失業関係の数字の悪化は、労働市場はなお強いとはいえ、軟化しつつあることを示している。一部は人員削減の影響とみられる。
経済調査会社パンテオン・マクロのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソンは「失業保険申請数の増加傾向はこれまで、労働市場について語られる際に抜け落ちていた重要な点だが、いまや明らかなのはレイオフが増えていることだ」と指摘。今回の失業統計は「それだけではFRBが5月に再び利上げするのを押しとどめるには不十分だろうが、無視することのできない警告になった」との見方を示している。
(forbes.com 原文)