この考えを前面に打ち出し、エポスカードを、社会貢献で小口投資した際の金利の受け取りから、寄付、家賃保証まで生活全般をサポートする機能へと多角化させている。さらにスマホアプリと一体化させ、誰もが簡単に利用できる「ライフスタイルアプリ」も始動した。使いすぎ防止機能やネットショッピング限定の番号を発行する機能を付け、評判もいい。
サービスの多角化によって、2022年度第2四半期の新規カード会員は35万人(前年差+8万人)、カードクレジットの取扱高は1兆7332億円(前年比+19%)まで成長した。
「創業以来、資産も担保もない若いお客さまを信用してお貸しするという商取引が私どもの祖業です。その商取引を基に700万人のお客さまに応えていくうちに、サービスのすそ野が広がり、商取引が金融サービス業化してきたのです」
キーワードは共創
クレジットカードの使いやすさで金融サービスのハードルを低くし、日常生活に浸透させてきた。それを成長が期待されている環境と社会活動に結び付け、企業価値向上にもつなげている。小売りをプラットフォームにしたフィンテックの新しい可能性を示した形だ。ただ、この先のフィンテックの未来は、「競争ではなく、一緒に価値をつくる共創こそ、21世紀のビジネスの大きなキーワードになる。この先頭を走るランナーのひとりになるというのが、我々が考えていることです」。
フィンテック領域は、丸井Gのような、多様な接点を持つ新旧企業が参入してこそ市場は活性化する。日本のフィンテック市場への参入に興味を示す、ある先進国のベンチャー企業トップが青井にこう言った。「日本人に新しいお金の活かし方が広まれば、フィンテック領域は活性化し、日本は宝の山になる」。その条件は、多様なプレーヤーがいて初めて成立するのだ。
あおい・ひろし◎1961年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、86年に丸井(現丸井グループ)入社。2004年代表取締役副社長を経て05年4月より現職。小売り業とフィンテックの改革を推進し続け、共創を打ち出した17年以降、丸井の業態は常に進化し続けている。