経営・戦略

2023.04.22 11:00

お金の活かし方はこう変わる。社会貢献型「投資思考」を広めたカード

三位一体ビジネスモデルの軸にあるのが、「収入や世代を問わない必要な人々を全方位でサポートする」という創業当初からの「ファイナンシャル・インクルージョン」だ。

この考えを前面に打ち出し、エポスカードを、社会貢献で小口投資した際の金利の受け取りから、寄付、家賃保証まで生活全般をサポートする機能へと多角化させている。さらにスマホアプリと一体化させ、誰もが簡単に利用できる「ライフスタイルアプリ」も始動した。使いすぎ防止機能やネットショッピング限定の番号を発行する機能を付け、評判もいい。

丸井はこれまで小売りとクレジットカードという信用を土台としたビジネスモデルで成長を続けてきた。2020年の「共創経営」宣言を機に、小売り×フィンテック×共創投資という3つの核の三位一体モデルへ転換。培ってきた顧客、テクノロジー、スタートアップ等への投資や新規事業の組み合わせだ。それぞれがからみ合い生まれるシナジーがこれからの日本のフィンテックの手本になる。

丸井はこれまで小売りとクレジットカードという信用を土台としたビジネスモデルで成長を続けてきた。2020年の「共創経営」宣言を機に、小売り×フィンテック×共創投資という3つの核の三位一体モデルへ転換。培ってきた顧客、テクノロジー、スタートアップ等への投資や新規事業の組み合わせだ。それぞれがからみ合い生まれるシナジーがこれからの日本のフィンテックの手本になる。


サービスの多角化によって、2022年度第2四半期の新規カード会員は35万人(前年差+8万人)、カードクレジットの取扱高は1兆7332億円(前年比+19%)まで成長した。

「創業以来、資産も担保もない若いお客さまを信用してお貸しするという商取引が私どもの祖業です。その商取引を基に700万人のお客さまに応えていくうちに、サービスのすそ野が広がり、商取引が金融サービス業化してきたのです」

丸井は、フィンテックの発展系として2020年にEPOSカード会員向けにデジタル社債を発行。募集金額1億円に対して約20億円を集めた。五条・アンド・カンパニーとクラウドクレジット社を通じ、途上国で資金を必要とする約33,000名に渡り活用された。(写真:支援を受け裁縫をする女性)

丸井は、フィンテックの発展系として2022年にエポスカード会員向けにデジタル社債を発行。募集金額1億円に対して約20億円を集めた。五常・アンド・カンパニーとクラウドクレジット社を通じ、途上国で資金を必要とする約33000名に渡り活用された。(写真:支援を受け裁縫をする女性)

キーワードは共創

クレジットカードの使いやすさで金融サービスのハードルを低くし、日常生活に浸透させてきた。それを成長が期待されている環境と社会活動に結び付け、企業価値向上にもつなげている。小売りをプラットフォームにしたフィンテックの新しい可能性を示した形だ。

ただ、この先のフィンテックの未来は、「競争ではなく、一緒に価値をつくる共創こそ、21世紀のビジネスの大きなキーワードになる。この先頭を走るランナーのひとりになるというのが、我々が考えていることです」。

フィンテック領域は、丸井Gのような、多様な接点を持つ新旧企業が参入してこそ市場は活性化する。日本のフィンテック市場への参入に興味を示す、ある先進国のベンチャー企業トップが青井にこう言った。「日本人に新しいお金の活かし方が広まれば、フィンテック領域は活性化し、日本は宝の山になる」。その条件は、多様なプレーヤーがいて初めて成立するのだ。


あおい・ひろし◎1961年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、86年に丸井(現丸井グループ)入社。2004年代表取締役副社長を経て05年4月より現職。小売り業とフィンテックの改革を推進し続け、共創を打ち出した17年以降、丸井の業態は常に進化し続けている。

文=中沢弘子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎私を覚醒させる言葉」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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