2023.04.09 12:00

伝説のメルセデス「SL」に新4気筒ターボ。V8好きを黙らせられるか?

坂元 耕二
でも、何よりも僕が気に入ったのは、そのロングノーズと6ピストンの黄色いブレーキ・キャリパーだね。すっきりとまとまっているため、外観はコンパクトに見えるが、実際には先代モデルよりも全方位的に少しずつ「大きく」なっている。外観は素直で素敵だけど、内装は真っ赤で派手。その赤い本革と黒のインパネとアルミ色のハイライトの組み合わせには、とても高級感が漂う。11.9インチのデジタル・ディスプレーは使いやすいし、MBUXのインフォテーンメント・システムの音声ガイダンスも素早い。乗車定員も4人とされているけど、もちろんリアシートはレグルームが足りず、「非常用」だ。




今回乗るSL43は、第7世代だけど、未来への兆しだ。AMGの2.0リッター4気筒エンジンには、市販車として初めて電動ターボチャージャーを搭載した。ベルト駆動なのでモーターアシストは小さいが(10kW/58Nm)、それを電動ターボが補完し、スペックは最高出力381ps、最大トルク480Nmだ。業界初の電動ターボが採用されたことで、AMGのターボのレスポンスが劇的に改善された。

今回、何が起きたかというと、AMGは、ペトロナスF1チームのマシンから電動ターボ(「eターボ」と呼ぶ)技術を借用し、発電機で駆動する48ボルトのマイルドハイブリッド電気システムと組み合わせたわけだ。eターボの強みは、2.0Lエンジンがアイドリングストップからレッドラインまで、ターボラグを最小限に抑えてパワーを発揮できるようにすることだ。構造的には、厚さ40mmの小型電気モーターをターボチャージャーのハウジングに直接組み込むことで、最終的に排気ガスが行き届くまで、ターボシャフトを内部から回転させることができる仕組み。メルセデスは、この2+2 SL43の0-100km/hの加速を4.9秒としている。


エンジンはもちろん力強い。そのたくましく鋭い中間加速がレッドラインまでそのまま伸びるわけではなく、滑らかにシャープに7000rpmのリミットまで吹け上がるものの、中速域から上はパワーの盛り上がり方が、実際は微笑みが溢れるほどではあるものの、これまでのSLユーザーにはちょっと物足りないだろう。やはり、これはV8ターボではないからしようがない。でも、ハンドリングや乗り心地は文句なしの出来栄えで、高速道路であろうが、ワインディングの山道であろうが、運転してて気持ちが良い。特にルーフを下ろした時に。


こんな再定義になったSLを出したAMGは非常に勇気があると思う。SL43は美しく速く、とても良くできているし、1648万円からの価格設定も魅力的だけど、果たして今までのSLを知る人は、それがSLの未来の姿だとしても、50%ビーフの仕様で満足するだろうか。

EVの場合は、航続距離、バッテリーの持ち、充電などの問題はあるけど、実際このようにスポーティに走ってみると、EVの加速性の良さと、低重心から生まれる安定性がつくづく伝わってくる。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事