ユニクロ柳井正の仕事論──ビジネスは「向き不向き」ではない

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これには納得しました。社員が成長していくためにも、会社の成長は欠かせないということなのです。
 
「自己実現には、個人として能力が上がる側面と、実際にそれが実行できるという2つの側面がある。双方とも、自分で成果を出して初めて実感できるものです。しかし当然、安定している会社では成果は出しにくいでしょう。それでは自己実現に結びついていかない。会社の成長というのは個人の成長のためにも絶対に必要なことなんです」

「私は商売には向いていない性格」

そして、「ビジネスパーソンとして成功するために何が必要なのか」と問うと、意外な言葉が戻ってきました。
 
「私はもともと商売には向いていない性格だと思っています。でも、商売にずっと携わってきてわかったことがある。それは向き不向きではなく、これだと思う仕事を一生継続することが何より大事だということです」
 
若い頃、柳井さんは自由な考え方の持ち主だったようです(当時のインタビューでは「いまでいうフリーター・タイプ」と語っていました)。
 
「ところが仕事が自分をつくってくれた。行動してきたことがどんどん自分の中に蓄積されていった。だから私が若い人に伝えておきたいのは、できるだけ早く、『一生かかって何をしたいのか』という目標を明確にして仕事をすべきだということです。ほとんどの人が目標もないのに毎日どっちの方向に行っていいのかわからずに努力している。これは無駄です」
 
めざす方向は自分で決めてもいいし、周囲から教えてもらってもいい。結論はこれだという方向を決めて取り組む。継続して取り組むのです。
 
「そしてもうひとつは、とことんまでやること。自分の職業に関して第一人者になるためには、少なくとも知るべきことは全部知っておかなければなりません」
 
たとえば、店長でも店舗経営に必要なすべてを勉強しようと思ったら、半端な努力では済まないということです。
 
「マスターしないと、その職業を自分でコントロールすることは不可能なんです。この過程で得られるものは途方もなく大きい。だからこそ私は、働く環境がとても大事だと思っているんです。自分の能力以上を求められる環境でなければ、個人の成長は難しいんです」
 
個人の成長は、会社の成長に結びついていきました。ファーストリテイリングはこうしてさらなる飛躍を続けていったのです。企業に、個人に、何が必要なのか。柳井社長からのとてもシンプルな学びです。

文=上阪徹

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