政治

2023.04.07 10:30

砲弾不足に陥るロシア軍、大砲はいつ使えなくなるのか

安井克至
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このような弾薬の非効率的な使用に加えて、ロシア軍はもう1つ問題を抱えている。備蓄が長距離ミサイルなどによる攻撃で爆破されていることだ。これは、米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」の主な用途の1つだったようで、ウクライナ軍は昨年7月に弾薬庫50カ所を破壊したと主張している。最初の数カ月間、ロシア軍の弾薬は前線からずっと後方に保管されていたが、明らかにかなりの量の弾薬が爆破され、前方の保管場所や個々の弾薬トラックさえも依然として定期的に攻撃を受けている。

備蓄がなくなれば、新たな供給源となるのは生産だけだ。ウクライナの推定では、ロシアは1カ月に約2万発、1日に700発弱の生産能力があるという。152ミリ砲1門は1分間に7~8発発射する。砲台が6門あれば15分の砲撃で700発前後を消費し、ウクライナ国内に展開するその他の部隊の分は残らない。部隊間での砲弾の奪い合いが激しくなり、ロシアの民間軍事会社ワグネルの部隊が砲弾を与えられていないと主張するのも無理はない。

ロシアにはまだ弾薬の備蓄がある。そしてロシアの軍需産業がプーチンの要求に応えようとする中で新しい弾薬の安定供給は続き、おそらく供給は増えるだろう。もしかしたら、イランから弾薬を追加購入することに成功するかもしれない。だが、1日に4万発、あるいは2万発、1万発消費することはもはや不可能だろう。ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍が今後2カ月で弾薬不足に陥ると確信している。ロシア軍の大砲は使い物にならないほど砲弾不足で、バフムート周辺での現在の攻撃は大砲支援なしの血まみれの歩兵突撃となっている。

次の段階ではウクライナ軍が攻勢をかけることが予想されるが、ロシア軍はその勢いを鈍らせるために大砲に頼るだろう。ロシア軍のキエフへの進撃を止めたときにウクライナ軍のドローン誘導の大砲がロシア軍に多くの損失を出したのと同じように。ロシア軍に十分な弾薬が残っているかどうか、そして弾薬を適切なタイミングで適切な場所に届けることができるかどうかが今後の展開において重要な要素となるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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