政治

2023.04.07 10:30

砲弾不足に陥るロシア軍、大砲はいつ使えなくなるのか

北大西洋条約機構(NATO)との本格的な戦争におそらく十分とされていた弾薬の備蓄を、ロシアはウクライナでの戦争目的を達成することなくどのように使ってきたのだろうか。ウクライナ軍は資源を最大限に活用するために精密な間接照準射撃を次第に発展させてきた。ドローンを使って狙いを調整し、的を絞った少数の砲弾でロシアの戦車を攻撃する。その一方で、ロシア軍はますます多くの火力に頼ってきた。

ロシア軍の最初の進撃が失敗に終わった後の昨年8月、欧州評議会の外交に関する文書には以下のようにある。
「ロシア軍はこれらの失敗を受けて集中砲火に頼る戦術に回帰した。ウクライナ軍の陣地に大規模な砲撃を数時間にわたって行い、歩兵や装甲車による攻勢のための道を切り開いた。ロシア軍は主にウクライナ東部でこの戦術を用い、結果として他の方法よりも多くの領土を獲得した」

米雑誌フォーリン・ポリシーの「ロシア軍が大量砲撃策を取り続ける理由」という見出しの記事で、執筆したルシアン・スタイアノ=ダニエルズは、米国が正確な砲撃の必要性を重視する一方で、ロシアは軍隊の不備を補うために大量の砲撃を用いることを好み、この戦術はナポレオン戦争以前に遡ると指摘している。 「兵力に資金を注げない、あるいは注ぎたくない軍隊は何か別のもので補わなければならない」と書いている。

これは特に市街戦において顕著で、ロシア軍はチェチェンで磨いた戦術を繰り返してきた。歩兵が建物ごとに戦うのではなく、抵抗に遭うと大量に発射された砲弾が区画全体を破壊する。その結果、占領した町や都市は完全に破壊され、大量の弾薬が費やされることになる。

ウクライナ軍との戦いでもロシア軍の大砲は特定の目標ではなく敵がいる方向に砲弾を発射するのが目立ち、これは第一次世界大戦の戦場を思わせる。

この戦い方はロシア軍の砲兵司令官にとって規則に従っているまでのことだ。ロシア軍の射撃表には、あらゆる目標に対して集中砲火を行うのに必要な弾数が書かれており、これによると装甲車1台を破壊するのにさえ数百発が必要だ。

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翻訳=溝口慈子

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