経営コンサルティングファームのA.T. カーニーは、世界の企業経営者を対象にして「2023年海外直接投資(※)信頼度指数」の調査を実施。今後3年間、世界で投資先として最も魅力があると思われる国の上位25カ国のランキングを発表した。同調査は、将来の海外直接投資(FDI)について、投資家の心理をまとめたものだ。
1位には、11年連続で米国がランクイン。2位には、昨年3位だったカナダが浮上した。日本は、昨年の4位から3位へとランクアップ。4位はドイツとなり、昨年の2位から順位を下げた。同社はその理由について、「東ヨーロッパの地政学的危機により、経済とエネルギーの問題に直面した結果」だと分析。5位にイギリス、6位にフランスが続いた。7位には、中国が昨年の10位から上昇。同社では「2022年第4四半期に、北京がゼロコロナ政策を撤回したことが原因」だと考察している。
昨年に引き続き、投資家は先進国市場を好む傾向が見られ、上位25カ国中19カ国、8割近くを占める結果に。新興国市場からは、中国(7位)やインド(16位)、アラブ首長国連邦(18位)、カタール(21位)、タイ(23位)、サウジアラビア(24位)が選ばれた。
新興国市場のみのランキングでは、上記6カ国にブラジル(7位)、メキシコ(8位)、アルゼンチン(9位)と中南米の国が続いたほか、東南アジアも好調で、マレーシア(10位)、インドネシア(11位)、フィリピン(12位)、ベトナム(13位)が上位に食い込んだ。
さらに、回答者の82%が今後3年間でFDIの増加計画があり、86%が今後3年間で企業の収益性と競争力にFDIがより重要だと回答。しかしこの前向きな心理は、下振れリスクへの懸念で抑えられていると同社は解説する。
同社マクロ経済部門のシンクタンクであるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシル(GBPC)のパートナー兼マネジング ディレクター、エリック R. ピーターソンは次のようにコメント。
「投資家は、 海外直接投資の見通しについて概して楽観的ですが、今回の調査結果はある程度の慎重さを反映しています。投資家は、今後3 年間の最大のリスク要因として、商品価格の上昇、地政学的緊張の高まり、新興市場における政治的不安定性の高まりを挙げています」
また、GBPCのマネージャー、テリー・トーランドは、「調査結果は投資家がグローバル化の利点を信じており、それが強化されることへの期待を示していますが、彼らはまた、今後3年間でさらに地域化が進み、各国政府が自給自足を高めるための戦略を追求するだろうと予想しています。このような結果は、グローバル化が続く一方で、その性質は変化している可能性があり、ビジネスリーダーたちはそれに応じて準備する必要があるという認識を示唆しています」と述べ、注意を促した。
※本調査では海外(外国)直接投資について、ある国の企業が別の国の企業に行う株式投資と定義している。
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