植野:短期的には東アニが持っているIP(知的財産)を使って別のメディアや商品を展開していくのが基本的なビジネスです。ただ、当社の事業の核はライセンス事業なので、アニメ以外でファンにコンテンツを届けられていない側面もあって。だからこそWeb3に大きな可能性を感じたんです。
もちろんこれまでやってきた王道のビジネスモデルはこれからも伸ばしていきたい分野ですが、今後会社を支えていく“柱”になるようなIPはたくさんあったほうがいい。それは各部署が各部署のやり方で取り組むところで、私たちデジタルプロダクト推進室もその一つ、という感じですね。
「The Sandbox」で感じた、新たなIPビジネスの可能性
水野:そんななかで、今年2月に発表された「The Sandbox」とのメタバースプロジェクトと、先日発表されたNFTプロジェクト「電殿神伝-DenDekaDen-」で本格的にWeb3事業をスタートされました。まずは、Web3にどのようにして興味を持たれたのかをお聞きしてもいいですか?植野:恥ずかしながら、最初は全然知識がなくて。2019年頃からだったか、交流のある社外の人たちとの会話の中で「NFT」というワードをよく耳にするようになったんですよ。実際に協業しませんかというお話もあって。それで興味をもって少しずつ勉強をし始めて、時間はかかりましたがここまで来たという感じですね。当室で進めているのは「The Sandbox」でのブロックチェーン・メタバースプロジェクトと、strata社さんとのNFTプロジェクト「電殿神伝-DenDekaDen-」の二つです。
水野:まず「The Sandbox」での事業についてお聞きしたいのですが、「The Sandbox」でやろうというのは、何か決め手があったんですか?
植野:目を付けたのが「経済圏」です。メタバースって「面白そう」と思っている人も「ちょっと怖そう」と思っている人もいますよね。僕は「月の土地」みたいだなと思ったんです。
今はまだ誰も手をつけていないけど、いつかロケットで誰もが月に行けるようになり、そこでお店ができていたら、モノの売り買いができたら……。それと同じようにメタバースも、少なくともいまの時点で、国境や言語の垣根を越えたやりとりが生まれている。将来的にもっとハードルが下がってきたときに、手をつけておかないのはもったいないなと思ったんです。
とあるメタバースプラットフォームでページを持っていますが、そこは当社の技術力や映像クオリティを楽しんでもらうものなので、ビジネスとはまた違ったモデルなんですね。そこと差別化する意味でも、我々は「経済」に強いプラットフォームがいいなと思っていて、その中でも規模の大きい「The Sandbox」を選びました。