(記事提供=ダイヤモンド・オンライン)
「相手が何を言ってくるか」想像しておく
仕事をしていると、相手と交渉する場面がたくさんあると思う。
交渉では基本的に「何が出てきても動じない」スタイルを貫けると強いものだ。
そのためにも、交渉に臨む前にまず自分の5W1Hを明確にしなければならない。
そして、相手が何を言ってくるかもあらかじめ想像しておく。
交渉である以上、自分のニーズと相手のニーズには必ず乖離があるはずだ。
その乖離を大前提として、提示される条件を想定するのだ。
そのうえで、自分と相手の質疑応答も想定し、答えを用意しておく。
「今日はこの交渉をしに行くので、相手からは、おそらくこういう返答がくる。そしたら、こう切り返す」と事前にイメージしておく。
私は交渉に臨む前に、返答のパターンを10通りは準備するようにしている。
そして、想定をするなかで、自分が受け入れられる範囲のゴールも決めておく。
「ここまでは譲れるけれど、これ以上は譲れない」という境界線をあらかじめ定めておくのだ。
これらの準備をしたうえで、交渉に臨む。
絶対に相手を否定しない
この本ではコミュニケーションの前提として勝ちすぎないことが大切と伝えた。
交渉においても100%勝つのではなく、「5勝5敗に見える6勝4敗」を目指すべきである。
ポイントは、すべての会話において絶対に相手を否定しないこと。
たとえば、自分が提示した条件Aに対し、相手は「いやー、うちはBじゃないとだめですね」と食い違いがあったとする。
そのとき、「いやいや、Aでお願いしますよ」と自分のニーズを押し付けてはいけない。
「そうですよね。いやー、Bは絶対いいですね。〇〇さんにとっては、Bじゃないと厳しい面もありますよね」と一度受け入れるようにする。
しかし、これは受け入れたフリなのだ。
「いいですよね。わかります。じゃあBを実現するうえでも、私たちとしてはこういう要素がないと難しくて、ここだけ叶えてくれませんか? それで限りなくBに近い条件をお届けすることができます」
このように相手のニーズを受け入れているように見せながら、自分のニーズに寄せていく。
これが交渉で目指すべきスタイルだ。
交渉は非常に難しいコミュニケーションだが、原則は相手と対等であるはずである。
対等な関係においては、相手をムキにさせることが一番の損になってしまう。
相手に一定の満足感を与えることが大事だ。
「でも・しかし・とはいえ」など、相手を否定する言葉は絶対に使わない。
まず示すべきは相手への共感や敬意なのだ。
些細なことに感じるかもしれないが、相手を否定しないというのは、交渉に限らずあらゆるコミュニケーションの基本であり、王道のテクニックでもある。
(黄皓著『超完璧な伝え方』から一部を抜粋・改変したものです)
黄皓(こう・こう)◎中国湖南省出身。ミラーフィット代表取締役、『バチェラー・ジャパン』4代目バチェラー。10代で来日、早稲田大学卒業後、三菱商事入社。メキシコ駐在後独立し、北米・アフリカからの資材輸入を行う貿易物流会社の代表取締役、全国20店舗以上展開のパーソナルジム経営者を務める。2020年7月、スマートミラーデバイス「MIRROR FIT.」を通してオンラインフィットネス事業を展開するミラーフィット創業。地上波放送をはじめ、雑誌、WEBなど多数のメディアに出演。著書に『超完璧な伝え方』(ダイヤモンド社)、『異なる勇気』(KADOKAWA)がある。