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2023.04.12

「CO2をゼロに」壮大な計画に挑むJERA。その一角を担う燃料アンモニア構想とは

日本のみならず、世界のエネルギー問題の解決に邁進するグローバル企業「JERA(ジェラ)」が自らに課すのは、2050年時点で国内外の事業から排出されるCO2を実質ゼロにする=“ゼロエミッション”という挑戦だ。

それを確実に実現するためのひとつの試金石となりうるのが、アンモニアをエネルギーとして活用する試みだ。数年前には、世界中のエネルギー事業者の誰もが見向きもしなかったアンモニアにいち早く着目し、2022年には燃料アンモニア調達のための業界初の国際入札を実施。2023年度には、石炭にアンモニアを2割混ぜて燃やす「20%燃焼運転実証試験」を開始する予定だ。

前人未到であるがゆえの困難をいかに乗り越えながらプロジェクトを進めてきたのか。

2人のキーマンの証言を交えながら、その軌跡を追っていきたい。


“アンモニアで発電”は、突拍子もないアイデアと受け止められていた

2015年4月、JERAが誕生した時、大滝は中部電力が進める液化天然ガス(LNG)調達プロジェクトの一員としてアメリカに駐在中。海外で知ることになった新会社設立のニュースを、大きな期待を持って受け止めていた。

「そのLNGプロジェクトは国内の電力会社としては初めての試みで、ゼロから事業開発する楽しさがありました。しかし、そこで痛感したのは、世界で伍する競争力を持つには企業規模が小さすぎるという “弱さ”でした」(大滝)

世界でエネルギー事業を推進しているのは、大手メジャーか資源国の国営企業のいずれか。だからこそ、国内ナンバー1とナンバー2のLNG取扱量を誇る電力会社の融合により誕生したJERAは、“日本でトップになることはもちろん、世界で戦える企業になる”と予感。数年後には、その予感が確信へと変わった。

2018年に大滝が帰還を果たしたのは中部電力ではなく、新生JERA。社内では“日本だけでなく世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する会社になりたい”という熱い議論が沸き上がっていた。

「その中で、私に与えられたのは、LNGの調達や海外における輸入導入事業の立ち上げ。しかし、JERAの中では、それとは別のゼロエミッションのエネルギー活用の話も進められていました。それがアンモニアのエネルギー利用でした」(大滝)

水素と同様にアンモニアもエネルギーを持っていることは昔から知られてはいたが、相対的に安価で、安定的に調達が可能であり、技術的課題もなく簡易に発電エネルギーが得られる石油や石炭、天然ガスの陰に隠れていた。

しかし、“脱炭素化”という社会要請に応え、ゼロエミッション火力発電の実現に情熱を注ぐJERAは、アンモニアの可能性に注目。R&Dで検証を重ねることで、アンモニアをエネルギーとし、かつ既存のアセットを有効活用できる実効性が見えてきた。

「2020年10月にJERAが2050年までのゼロエミッションロードマップを発表した当時、アンモニアを焚いて電力エネルギーを供給しているところは世界中を探しても皆無。弊社の経営層も今では笑い話のようによく言いますが、“このアイデアで事業を起こすと話したら、世界中で笑われた”と。それだけ突拍子もない話だと受け止められていたようです」(大滝)

JERA LCFバリューチェーン統括部 LCF計画部 部長の大滝雅人

もちろん、その段階で100%の確信があったわけではない。それでもチャレンジする意義がある事業だと、当時のJERAの経営陣は考えていた。

「このまま火力発電を続けることは、サステナブルではないことはわかっていました。最終的には脱炭素化を実現するのは当然のことながら、同時に足元で電力を安定供給し続ける現実的な責任もあります。いかにして世の中の期待に近づけていくのか、そのためにLNGの安定調達、再生可能エネルギーの開発、そして水素・アンモニアを組み合わせながらの“ゼロエミッション火力”の実現を目指していくのがベストで、その重要な三つ目の柱を立ちあげようとしていました」(大滝)

基準がないのだから、自らの手で作るしかない

2021年の1月に、全社部門横断のクロスファンクションチームがチームアップされ、本格的にゼロエミッション火力に向けた事業化に乗り出すことに。大滝は原料確保に向けた事業開発部門のリーダーとしてアサインされた。

実は、アンモニアをエネルギーとしていくためには、3つの課題があった。一つ目は現段階においては、アンモニアを大型発電所で利用することが初めてという技術的課題、二つ目は前例がないため法規制や支援制度の設計が未成熟であるという課題、そして三つ目に燃料となるアンモニアをしっかり確保できるかという課題があげられた。

「世界的に肥料・化学製品向けを中心とした輸出入の商流はあるものの、需給はタイトな状況にありました。我々が保有する碧南第4号機を活用し20%燃焼させるためには、現在日本が輸入している2.5倍の量を調達する必要がありました」(大滝)

いざ技術や支援制度が確立されても、肝心な原料が確保できなくては、まったく意味がない。本当に確保できるのかどうか?イメージがつかめない状況の中でプロジェクトは走りだした。

「優先すべきはアンモニアの確保ではありましたが、現在、取引されている肥料向けのものを引きはがすわけにはいきません。そうなると肥料の価格が高騰し、食料の価格上昇を引き起こします。私たちに課せられていたのは新規開拓で、バスケットの中から取ってくるのではなくバスケットを大きくする必要がありました」(大滝)

大滝たちはまず、LNG事業を通じて繋がっていた世界中のプレイヤーにコンタクトをとり、商流を探ろうとした。しかし、アンモニアでエネルギーを作るという前例がないためか、“誰と組むのがベストか?”という手触り感がまったくつかめない。

そこで大滝たちは、公平に間違いなく相手を選ぶために国際入札に踏み切ることに。もちろん、それは世界的に見ても前例のないチャレンジであり、“クリーンアンモニア”という、アドオンした価値をクリアできるサプライヤーを評価する基準すらない状況にあった。

「すべて白紙の状態から、自分たちの手ですべてを作っていくしかありませんでしたが、指針になったのは、会社として大事にしているバリューです。安定供給や安全なオペレーションを求めるステークホルダーの声が経営に反映されますが、30社程度に絞り込んで評価した時に、その声が軸になりました」(大滝)

ぶれることのない軸を持ちながら、それが信頼のおけるパートナーなのかどうか?を様々な角度から検証。トラックレコードや会社のポリシー・理念はもちろん、安定供給面では既存の生産稼働率、ロジスティクス面では生産基地としての余力があるか、さらにアンモニアの品質が“クリーン”であるか、加えてそれを維持するために、どれぐらい投資しているか、外部機関の支援も加えて全社・全プロジェクトの信頼性を確認。多岐にわたる評価ポイントをリスト化し点数を付け可視化したうえで基準を作っていった。

「経営陣と“ここまで頻繁に話をするものか?”というぐらいにディスカッションを重ねました。私のように事業開発を担当する人間は、“この事業をなんとかしたい”という思いや責任感が強くなるあまり、盲目的になりがちなので、様々な目線持つ経営陣の声を聴くことは非常に重要です。特に、今回のような新しく、しかも経営にインパクトがある事業のときは必要不可欠だと感じました」(大滝)

 “TalkingからDoingに変わった”瞬間

2022年の2月に業界最初の国際入札を実施。50万トンという供給量を含む諸条件を記載した提案依頼書を35社に対して送付した。その直後に岩間が入社。前職で船舶用の潤滑油を扱い、海運業界に身を置いていた彼女がJERAへの入社を志望したのは、まさにこのアンモニアに可能性を見いだしたからだった。

「前職で、燃料アンモニアが海運業界の脱炭素化のキーとなると考え、“新しい代替燃料に携わる仕事がしたい”と考えました。そんな時にJERAの求人情報と出会い、すぐに応募。この会社でアンモニアという新しい燃料を起点に新しいマーケットを作る、”日本のエネルギーを新しい時代へ“そんな大きな事業に携わりたいと思いました」(岩間)

入札を開始すると、新規および既存サプライヤーからのプロポーザルが相次いだ。正直言って、すべてがJERAの望む供給条件を提示できる相手とは限らない。それらの企業の精査を任されたのが岩間だった。

様々な角度からエバリューションを重ね、2022年6月に第一選考をクリアしたサプライヤーに通達、二次選考を行った。未経験の岩間が、この重要度の高い業務を進めるうえで重視したのはシンプルに“対話”だった。

「供給できるアンモニアはクリーンかどうか、当社のターゲットとしている2027年度20%燃焼開始タイムラインに合うかどうかなど実務的な話はもちろん、我々のミッションに共感できるかどうかまでも、現地に行ってFace to Faceで対話をし、私だけでなくすべての関係者が納得できる形で評価していきました」(岩間)

実は岩間には、2歳と4歳の子供が二人いる。にもかかわらず、入社後半年で2回、アメリカに出張をした。

「長期出張で不安もありましたが、周囲からのサポート・上司からの『行って来い!』という後押しもありいい意味でのプレッシャーを感じながら現地に飛んでいきました」(岩間)

そんな岩間の奮闘も功を奏し、2023年1月、二次選考を無事に終え、ノルウェーに本社を置く世界最大規模のアンモニア製造販売企業Yara、米国シカゴに本社を置く世界最大のアンモニア生産者CF Industriesとの間で、クリーンアンモニア製造事業の共同開発と燃料アンモニア調達に関する覚書を締結。年間最大50万トンのアンモニア確保に向けて一つの大きなマイルストーンを突破した瞬間だった。

しかし、これはあくまでバリューチェーンのパートナーが確定できた段階にすぎない。経営層からねぎらいの言葉をもらった大滝は経営会議の場で「これでやっとスタートラインに立てました。事業開発のパートナーを選定してこれから開発というものを進めていきます。開発というのはモノをつくることでありその道中には色々なことが起こります」と宣言。その言葉通り、ここからプロジェクトは開発フェーズに入っていく。

岩間も決して気を緩めることはない。「むしろこれからが正念場です。様々な課題・選択を迫られる局面が出てくることは予測されるので、それをいかにタイムリーに対処できるかどうかが重要になると思っています」(岩間)

まもなく愛知県の碧南火力発電所で、石炭にアンモニアを2割混ぜて燃やす「20%燃焼運転実証試験」が開始される。その先、2027年度には本格運転のスタートが待っている。前人未到のアンモニア燃料の実現に向けて大きな一歩を踏み出した。

このプロジェクトを通じ、岩間はJERAの魅力を痛感した。

「年齢に問わずスケールが大きい仕事に裁量をもって携わる事ができる会社です。まだ小さな子どもを2人抱えるワーママでありながら、海外出張も含め大きなチャンスを与えてくれました。また、様々なバックグラウンドを持ったキャリア入社の仲間も多いので、共に仕事をしていて自らの視野も広がりますし自身の成長を実感できる環境にあります。(岩間)

JERA LCFバリューチェーン統括部 LCF計画部 水素・アンモニアマーケティングユニットの岩間依子

ユーティリティ会社というと“お堅い”雰囲気というイメージがあったが、「新しいアイデアがあるなら聞かせてよ」「やりたい仕事あるなら言って」と声をかける上司がいて、それを実際に環境として提供している。入社前後でイメージは大きく変わった。それは“巨大なベンチャー”を自認するJERAならではの空気なのだろう。

「会社設立から年数も短く、社内制度が整っていない部分もありますが、だからこそ逆に社員も会社も活発に意見交換し、制度設計への落とし込みを行っています。まさに、私たち自身でこれから作り上げていく会社だと感じています」(岩間)

大滝もプロジェクトを振り返り、大きな意義を感じている。

「あの入札は国際的に業界としてインパクトが大きかった。まさに“TalkingからDoingに変わった”瞬間です。海外では、まだまだ“Talking”の段階にある企業はたくさんありますが、それでは解決に繋がりません。私たちは入札開始とともに、“Doing”にコミットしたのです。うまくいくかどうかわかりませんが、“Doing”のフェーズに入るとリアルなプロジェクトとなりインパクトを持って、周囲が“本物なのだ”と認識してくれます。今後は、本当のDoingを完了してアチーブメントにしなければなりません」(大滝)

巨大な会社だからできること、新しい会社だからできること、誰もがなしえなかった第一歩を踏み出せるのは、この2つが揃う稀有な企業だけなのかもしれない。



大滝雅人(おおたき・まさと)◎JERA LCFバリューチェーン統括部 LCF計画部 部長

岩間依子(いわま・よりこ)◎JERA LCFバリューチェーン統括部 LCF計画部 水素・アンモニアマーケティングユニット

Promoted by JERA / photograph by Ishida Hiroshi / text by Ito Akihiro

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