仏ブルゴーニュ、「生物多様性基金」でワイン生産者支援

遠藤宗生

フランス東部ブルゴーニュ地方のブドウ畑(Getty Images)

整然と並ぶブドウ畑は美しい光景だが、世界各国のワイン生産地では、農場での単一栽培が持つある欠点が認識されつつある。単一の作物が栽培されることによって、他の植生や野生生物が減少し、生態系のバランスが崩れることがあるのだ。自然や天候の影響を制御するために薬品や介入度の高い手法が使われると、環境への影響はさらに大きくなる。

しかし、ワイン生産者は、ブドウ畑とその周辺に存在する生物の多様性を向上させることで得られる効果に励まされている。生物多様性向上には、病気や害虫の抑制、健全な水系の構築、土壌の肥沃度向上、受粉の促進、有益な種の増加といったメリットがある。

フランス東部ブルゴーニュ地方の当局は最近、「クリマ」内の生物多様性の構築に向け、資金を提供すると発表した。クリマとは、それぞれ固有の歴史を持つブドウ畑の区画を示すブルゴーニュ地方特有の言葉で、ユネスコの世界遺産にも登録されている。ブルゴーニュ当局は報道発表で、「この世界遺産の管理を取り仕切るブルゴーニュ地方ブドウ畑クリマ協会は、クリマ全体の生物多様性の維持と発展を目的とした共同プロジェクトに資金を提供し支援するために、生物多様性基金を設立した」と述べた。

資金提供を希望する場合は、どのような融資を受けることができるのかを調べるための土地診断を受けなければならない。助成対象として選ばれたブドウ畑の管理者は、生物多様性関連プロジェクトの各段階にかかる費用の5~8割を受け取ることができる。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会も生物多様性を優先事項とし、保護地や多様性のある景観、有機農業を増やすとともに、肥料や化学農薬の使用と影響を減らすことを目的とした戦略を掲げている。

ブルゴーニュ地方のシャサーニュ・モンラッシェ村は、こうした生物多様性の取り組みを進めている。シャサーニュでワイン生産を営むアドリアン・ピヨーによると、「シャサーニュに戻っても、もはやブドウ畑の海は見られない」という。

ピヨーをはじめとする同村のワイン生産者は、生物多様性基金やその他のパートナーと協力し、ブドウ畑の周囲にナシやモモ、サクラ、アーモンドの木90本と150メートルに及ぶライラックの生け垣を植えた。将来のプロジェクトに向けた若者の関心を高めるため、植樹には地元の児童も参加した。今後、第2弾の植樹を含む追加フェーズが行われる予定。

世界自然保護基金(WWF)の最新の報告書によると、農業生産と環境保全のバランスを保つには「自然を犠牲にして生産を最大化するのではなく、自然が農業を支えるという、生物多様性を生かした農業へのパラダイム転換が必要だ」という。ブルゴーニュ地方のような取り組みは、世界レベルで求められている。

ファンドマネージャーのナタリー・オルドノーフーケは「ワイン生産者の間では、真の意識が働いている。世界遺産に登録された土地に、私たちの支援を拡大していきたい」と説明。シャサーニュ・モンラッシェのような「試験プロジェクトで得た経験を活用することで、真の原動力を刺激することを望んでいる」と語った。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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