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2023.04.07

総合電機メーカーとしてのアイデンティティを取り戻す大改革に挑むCIOの決意とは?

本連載の最終回となる第5回は、三菱電機 ビジネス・プラットフォームビジネスエリアオーナー(ビジネス・プラットフォームBA戦略室長、インフォメーションシステム事業推進本部長)、CIO(情報セキュリティ、IT担当、プロセス・オペレーション改革本部長)の三谷英一郎氏と、レノボ・ジャパン執行役員副社長の安田稔が対談した。壮大な全社改革の目標を掲げ、その中心にいるCIOの揺るぎない思いと、日々の奮闘を聞いた。


次の100年へ向けて、今こそ“総合電機メーカーとしての強み” を磨くとき


安田稔(以下、安田): 三谷さんは、ご入社以来ずっとITの分野でご活躍であると伺いまして、まさにCIOになるべくしてなられた方だと思いますが、改めて、ご自身のキャリア遍歴を教えていただけますでしょうか?

三谷英一郎(以下、三谷):1985年に入社し、最初の10年間はコンピュータシステム製作所(当時)で、システムエンジニアとしてお客様のシステム開発をする(手伝う)経験を積みました。

その後、社内で公募されていた新規事業プロジェクトに手を挙げました。2年ほどこのプロジェクトに参加していましたが、残念ながら部門が解散することになりまして。当時のプロジェクトに関わる上司から「これからどんな仕事をしていきたいか?」と問われ、恐る恐る「シリコンバレーに行かせて欲しい」という希望を出したところ、「それなら頑張ってこい!」と背中を押してもらいました。そして、4年半ほどのシリコンバレー駐在を経て帰国し、2001年にコンピューターシステムの開発部門に戻りました。2015年からは神戸製作所の所長として、主に官公庁向けのシステム開発を多く手掛けましたね。

2018年には「インフォメーションシステム事業推進本部」の副本部長になり、2021年4月にCIOに就任しました。現在は、お客様向け、DX推進など社内向けのITの両方を管轄しています。

このようなキャリアを歩んできたわけですが、当社はハードウェアの担当者が圧倒的に多いなか、私は珍しく、ソフトウェアの道を歩んできた形です。

安田:成長分野に常に身を置いてこられたのですね。約2年前にCIOに就いてからは、どのようなミッションに重点的に取り組んでいらっしゃいますか?

三菱電機 ビジネスプラットフォームビジネスエリアオーナー(インフォメーションシステム事業推進本部長)、CIO(情報セキュリティ、IT担当、プロセス・オペレーション改革本部長) 三谷英一郎氏

三菱電機 ビジネス・プラットフォームビジネスエリアオーナー(ビジネス・プラットフォームBA戦略室長、インフォメーションシステム事業推進本部長)、CIO(情報セキュリティ、IT担当、プロセス・オペレーション改革本部長) 三谷英一郎氏


三谷:弊社は、家庭電化製品から、半導体、電車のモーターや空調、発電所の発電機、人工衛星まで、さまざまな製品を製造しています。そういった身近なものから特殊な領域の製品まで製造する、“総合電機メーカーとしての強み” を取り戻していきたいと考えています。当社はいま、9つの事業本部(含:事業推進本部)があり、今後も多様なポートフォリオは維持したいと考えています。その一方、これまで事業本部制を取っていたがゆえに、個別最適に陥っていることが課題です。収益や業務システムも製作所ごとに管理しています。

事業本部制には、現場の意思決定が早くなるメリットがあります。しかしながら、総合電機メーカーが専業メーカーと伍して戦うとなると、共通コストが大きい、あるいは集中投資がしにくいといった点で不利になりがちです。そのぶん、身近なものから大きなものまで「総合」で製品を作る我々ならではのメリットを最大化しなければならないと考えています。

各事業本部のメンバーは、自分達の収益を上げるために尽力してくれていますが、経営の役割として、縦割りの業務プロセスや意識を変えてゆき、かつ横の繋がりで総合力を発揮できる総合電機メーカーとしてのアイデンティティを取り戻さなければなりません。

当社は2021年で創立100周年を迎えました。次の100年に向かって、いまが三菱電機をつくり替えるときだと考えています。

ピンチの場面でお客様にかけられた一言が、CIO就任後の教訓に


安田:いまの三谷さんを形づくっている、これまでの経験をお伺いしたいです。大変だったエピソードなどはありますか?

三谷:いま振り返ると、お客様に育てていただいたことの連続だったように思います。その中でも、高速道路会社向けのシステム開発では、ピンチの場面でお客様の一言に救われました。

そのプロジェクトは、高速道路で渋滞や天候の情報を知らせる情報板のシステム開発をするものでした。膨大なデータを整理するため期限通りに試験を終わらせて納入することが難しくなり、お客様にお詫びに行ったときのことです。「三谷さんは技術屋だから、隅から隅まできちんと試験しなくてはいけないと思い込んでいませんか? まずは1年の中でもっとも道路が混雑する時期の試験を優先していただければいいですよ」と言っていただいたことが忘れられません。

目指す姿を意識し、本当に意味のあることを見極める姿勢は、このような経験を通じてお客様から教えていただきました。技術を磨くだけではなく、ユーザー視点が大切なのだと痛感したエピソードです。

CIOに就任してからも、この経験は折に触れ思い出します。社内改革にしても、全社や各事業の目指す姿を描き、皆で意識を合わせていかなければ、的外れな施策ばかりになってしまうでしょう。

そのため、経営陣をはじめ改革に関わるメンバーとは、目指す姿を徹底的に議論しています。当社が改革した暁にはどうなっていたいのか、そして、どんな社会課題を解決したいのか。この問いに対する考えがメンバー間で揃っている状態を目指しています。

社内の業務改革「M-X」が始動し、機運づくりの真っ最中


安田:三谷さんのビジョンをお聞きし、今まさに大きな変革と飛躍を目指していらっしゃる時期だと感じました。 IT改革やDXの重要性を知ってもらうため、社内へどのような浸透策をされているのでしょうか?

三谷:まず、私の部門が企画する形で、当社の経営陣を集め、改革をテーマとした合宿を数回にわたって実施しました。“目指す将来像と課題意識のすり合わせ” が目的です。

その後、いざ事業本部を巻き込んで改革を進めるにあたっては、当社の主力事業を担うFA(ファクトリー・オートメーション)システム事業本部から着手することにしました。FAのメンバーは、事業が強いがゆえに、グローバルでの競争を常に意識しています。とくにヨーロッパの競合はデジタル化や総合力の面で長けており、このままでは負けてしまうという緊迫感を抱いていたのです。そのため、この改革案にはすぐに賛成してもらえました。

その一方で、意識がなかなか変わらない事業部門もあることは事実です。ここから変革をどう進めていくかが大きなチャレンジですね。

業務改革を全社に展開するにあたり、改革の活動に「M-X(エムクロス)」というプロジェクト名をつけ、ロゴも作って社内に周知しました。「M」は三菱電機グループ、「X」は「クロス」。当社グループが部門横断で改革を進めようという意味を込めています。そして、各事業部門にいる改革責任者を「M-X責任者」と呼び、彼ら・彼女らと一緒に社内改革を浸透させていこうと奮闘中です。

レノボ・ジャパン 執行役員副社長 安田稔

レノボ・ジャパン 執行役員副社長 安田稔


安田:M-Xのメンバーは、現場で改革の舵取りをする要となるメンバーですね。社外向けにはどのようなメッセージを発信されていますか?

三谷:2022年度以降のIRメッセージでは、「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」を目指すこと、その実現にあたって最大の課題は業務改革であることを発信しています。社会課題の解決に向けて製品の付加価値を上げ、そこから得られるデータを利活用して、次の価値創造につなげるという意味で「循環型」と表現しているんです。

当社の強みは、さまざまなものを組み上げてプラントやシステムを開発するエンジニアリング力だと認識しています。そこにデジタルの力を取り入れ、データを活用して価値を生み、物理的なハードウェアに反映していく「デジタルツイン」の状態をつくりたいと考えています。

自分たちの代で “総合電機メーカーとしての強さ” を取り戻す、不退転の決意


安田:大きな目標を掲げていらっしゃるので、日々、難題の連続だと思います。三谷さんご自身が、目標に向かって進むために何をミッションにしているのでしょうか?

三谷:自分たちの代で、総合電機メーカーとしての強さを取り戻したい。この思いを、社長をはじめとする経営陣と共にしていることがモチベーションの源泉です。

そのためには、これまでのこだわりを捨てる必要もありますね。自前主義の意識を脱し、エコシステムの一員として、さまざまなパートナー企業と柔軟に連携しながら付加価値を生むことにシフトしていきたいと考えています。



安田:改革を実現するためには、どのような人材がこれから必要だとお考えですか?

三谷:顧客や世の中に対する多様な興味をもちつつ、ITの基礎知識もきちんと身につけることが、これからの時代に求められる姿勢だと考えています。

まずは、ITの作り方だけでなく、使い方や活かし方も熟知している技術者が必要です。たとえば基幹システムの開発では、これまでは利用マニュアルをきちんと用意して使ってもらうのが当たり前でした。これからは、ユーザー自身がデータを操作するなど、柔軟な使い方をする時代になっています。これはすなわち、ITのユーザーと提供側の垣根が低くなることだと思うのです。技術者は技術力に加えて、ユーザーがシステムを使って何をしたいのか、顧客視点での深い理解も欠かせません。

その一方で、技術がどれだけ進化しても、ハードウェアとソフトウェアの基礎知識はやはり必要です。コンピューターはどうやって動いているのかを知り、性能が出なければ何をすべきかの見当をつけられなければなりません。必ずしも、高性能のマシンを用意すればいいわけではないんです。知識を使いながら現状分析し、技術面での問題解決ができてこそ、技術のプロであると思います。

安田:私も、基礎的な知識は大切だと思っています。たとえAIを使って仕事をするようになっても、それが現状の最適解なのかを考えるのは人間なのですよね。

今日はありがとうございました。三菱電機様のこれからの飛躍が楽しみです。



三谷英一郎(みたに・えいいちろう)◎1985年、早稲田大学 理工学部卒業。同年に三菱電機に入社し、コンピュータシステム製作所(当時)に配属。総合商社向け次世代通信システム、電力会社向け基幹業務統合化システム等の構築プロジェクトを担当。1997年から4年半のシリコンバレー地区駐在を経て、帰国後は 神戸製作所にて監視制御システム共通プラットフォーム開発、電力小売り自由化対応システム、道路交通管制システム、航空管制システム等の構築プロジェクトを担当。2018年インフォメーションシステム事業推進本部 副本部長に就任。2023 年 4月より現職。

安田 稔(やすだ・みのる)◎1985年、明治大学 工学部卒業。デュポン・ジャパンでの営業経験を経て、1994年、コンパック日本法人入社。以降ITトップカンパニーで事業責任者を歴任。2015年8月、レノボ・ジャパン入社。同年レノボ・ジャパン 執行役員専務、NECパーソナルコンピュータ 執行役員に就任。2018年5月より、レノボ・ジャパン執行役員副社長。

日本のDXを牽引する “IT改革者たち” の脳内
第1回 丸井グループ 海老原 健氏 
第2回 沖電気工業 坪井 正志氏
第3回 マツダ 木谷 昭博氏
第4回 明治安田生命保険相互会社 牧野 真也氏
第5回 三菱電機 三谷 英一郎氏(本記事)

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