以下、栗山監督のスピーチの全文を紹介する(栗山監督のスピーチは同大のHPに掲載された入学式の動画から視聴可能)。
辛い経験からしか人は育たない
みなさん、こんにちは。ご入学おめでとうございます。実は私は1年間、北海学園大学に籍を置いてたのですが、野球の方がバタバタして、なかなかここに来ることができませんでした。侍ジャパンは、世界で戦って帰ってきたばかりですが、今回、一区切りつけて、みなさんの入学式に参加することができました。
みなさんは高校時代、コロナの影響できっと、なかなか思ったような高校生活を送れなかった。大変だったと思います。
ただ、逆にその大変な経験、難しかったり、困ったり、苦しかったりをくぐり抜けた経験でしか人は育たない。野球でも同じ、選手は成長しない、とずっと言ってきました。
ですからこれからはみなさんに、その経験を生かして、すばらしい学生生活にしてもらいたいと思います。
たった一人のウェイトトレーニング
ひとつだけ、僕が学生時代に考えていたこと、経験したことを話させてもらいます。僕は、学校の先生になりたいと思って、教員養成の大学に進みました。でも同時に、どうしても野球をやりたいというのもあった。
しかし、なかなか練習する時間がなかった。週に2回、アルバイトをしないと学生生活が送れない環境にあって困難でしたが、どうしても自分の夢が捨てきれず、プロ野球選手になりたいと思っていました。
だから、授業と授業の合間にたった1人で90分、ウェイトトレーニングをして、また授業に戻る、そういう生活をしていた。
まわりからは「お前何やってんねん?」と見られていましたが、やらずにあきらめたくはない、そういう思いで、ずっと続けていたんですね。そして大学4年の時、プロテストを受けて、まあ、今はテスト生制度はないのですが、幸いなことに合格し、プロ野球界に入っていけたという経験があります。
そして今回、たとえばWBCでも、あれだけ一流の人たちがあれだけの全力を尽くして、あれだけがんばると、多くの人に感動を与えられる。そういうことをみなさん、感じていただけたんじゃないかと思います。
ただ、そこに至る上で、選手全員が才能豊かだったのかというと、そんなことは決してないんだろうと思います。むしろ、誰にも知られない努力をずっと続けることによって、全員が
あそこに立って大好きな野球を精一杯やって、だからこそ、これだけ日本のみなさんに喜んでもらえたのだと思います。