──経営者や富裕層が遭いやすい詐欺についての具体例と、遭わないための心得をお願いします。
杉山:「国際ロマンス詐欺」で7000万円の被害に遭われた方がいらっしゃいました。「将来の結婚生活の為に資金を作ろう」と巧みに誘うこの種の詐欺は、被害者の気持ちに情が入り、冷静な判断より情が優ってしまう性質の詐欺なので、7000万円という高額な被害額まで膨れ上がってしまったわけです。
決して自分1人だけで判断してはいけません。何かコトを始める時には、第三者の忠告に耳を傾けて下さい。また、副業詐欺に於いては、「50万円投資したから回収してやる! といったスケベ心」が詐欺額を増やす誘因になってしまいます。「先にお金を支払って儲かる話は基本的に無い」と認識してください。また、本業の仕事以上に、楽して儲かる案件などありません。
取材するなかで、現在社会の縮図が見えてきた。SNS、インフレ、情報過多の時代。「人よりもっといい生活を送りたい」「楽して稼げる方法を得たい」という心の隙間に忍び寄ってくるのが副業詐欺をはじめとした様々な詐欺だ。
YouTuberやアフィリエイターやライバーが楽に稼いでいるといった安易なイメージが形成されているネットを舞台に、「短時間・手軽・高収入」というワードを小出しにしつつ、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産を巧みに用いて、足のつきにくい方法で手を変え品を変え忍び寄る。
2023年3月に警視庁が発表した昨年1年間の特殊詐欺被害額は、実に361億4000万円にのぼる。しかしながら、犯人検挙率はわずか1.9%という絶望的な数字からも、詐欺事件における捜査の難しさが指摘されているのも事実。一方、消費者庁では、消費者センターに寄せられた苦情・相談が多発している副業ビジネス事業者の実名を公表して注意喚起を促すアクションも。そんななか、詐欺被害に遭わない最良の方法とは、残念ながら自己防衛しかないのが現状なのである。