アート

2023.04.10

アートフェア「RE:FACTORY」の仕掛け人が語る、ビジョンと感触

加藤信介・大山エンリコイサム

──大山さんはアーティスティック・ディレクターを務めるにあたって、加藤さんがおっしゃるコンセプトはすぐに受け入れられましたか?

大山エンリコイサム(以下、大山):昨年恵比寿で開催された初回のアートフェスティバルにも伺っていましたし、YouTubeの番組も拝見していて、エイベックスがアートを取り上げることに新鮮さと興味を感じていました。間口は広いけれど、ちゃんと奥に本格的でストイックなものもある。二層、三層のしっかりした構造で、よく練られたアートプロジェクトとして展開されていて、かつ規模感も含めて誰でもできるものではないので、重要な取り組みだと思っていましたし、「RE:FACTORY」のコンセプトについてもすぐにピンときました。

──アーティスティック・ディレクターとしてのご自身の役割をどう捉えていましたか?

大山:やはり参加作家のラインナップが質を担保するので、作家のセレクトは非常に重要でした。それから展示としての空間への落とし込み。これらを研ぎ澄ませていき、アートの専門家が見ても納得するレベルにしていくことが、自分の役割だと考えていました。
「RE:FACTORY」のメインアーティストとアーティスティック・ディレクターを務めた大山エンリコイサム

「RE:FACTORY」のメインアーティストとアーティスティック・ディレクターを務めた大山エンリコイサム


また今回はステートメントとして文章もかき、会場やウェブサイトに掲出しました。美術館の展覧会だとキュレーターの意図を解説したテキストがあることが一般的ですが、アートフェアだと通常はそこまでやりません。ただ「RE:FACTORY」は販売機能があるフェアでありつつ、同時にキュレーションされた展覧会でもあったので、ステートメントによってきちんと主旨を掲げました。

──「MEET YOUR ART」はいままでアートに触れたことがない人にアートに触れてもらう機会を創出することも大事にされていると思いますが、どういう基準で作家を選ばれたのでしょうか?

 加藤:まさに音楽を起点にアートに触れてもらう機会を創出することも目指してART×MUSICというコンセプトを設定しましたので、音楽が活動のルーツや作品のアウトプットにある作家さんに多数参加いただいてはいますが、それだけではなく、同時にアートフェア全体を通して、来場いただいた方に今のアートシーンを多面的に楽しんでいただきたいという思いがあり、その意味で多様な作家さんに参加いただくことを大事に考えていました。

 大山:今回の出展作家のひとりに、年齢的には中堅に該当する方がいて。これまで大きく注目されることはないながらもコツコツと優れた作品を作ってきた方なのですが、「RE:FACTORY」では会期中に作品が完売し、次の機会も多く得られたそうです。SNS上でも「RE:FACTORY」来場者の多くが彼の作品をポストしていて。新しい注目作家を生み出すという意味でもよい働きができたという手応えを感じています。
会場には気鋭のアーティスト28名の作品100点以上が展示された。

会場には気鋭のアーティスト28名の作品100点以上が展示された。

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Text by Tsuzumi Aoyama / photographs by Seiichi Saito

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