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2023.04.05 09:30

ロービジョンの写真家向けカメラキット、ソニーとQDレーザ共同開発

裸眼のまま明瞭な映像が見られる

筆者も今回の取材機会にDSC-HX99 RNV Kitを体験した。筆者は人並みに視力が弱いので、日常的にメガネをかけて生活している。

網膜投影技術を搭載するアクセサリービューファインダーを通すと、メガネを装着したり、ファインダーの視度調節を行わなくても撮影前後のプレビュー映像が明瞭に見える。メガネを装着しないまま、これほど明瞭にものが見える体験は久しぶりだった。

人間の目による自然視の場合、前眼部である「角膜と水晶体」がカメラでいうところのレンズの役割を果たし、光の屈折を調節しながら見える世界を網膜に映し出す。網膜投影の場合は微弱なレーザー光が前眼部をスルーして、網膜に直接像を結ぶ。そのため前眼部の影響を受けにくくなることがこの技術の大きな特徴だ。近視・遠視・乱視、またメガネやコンタクトで矯正できない不正乱視による影響も回避される。

中央上部のアクセサリービューファインダーをのぞき込むと四隅まで明瞭なプレビュー映像が見える中央上部のアクセサリービューファインダーをのぞき込むと四隅まで明瞭なプレビュー映像が見える

QDレーザの宮内氏によると、網膜投影の場合は前眼部の影響を受けないため、通常の自然視ではボケて見えがちな視野の周辺部までが明るく、かつ高解像に見られる効果もあるという。本機のアクセサリービューファインダーは最大720pのハイビジョン画質による表示に対応しているので、映像は四隅まで高い精細感が感じられる。ファインダーのディスプレイデバイスをアップグレードすれば、今後も画質はさらにブラッシュアップできるだろう。

高倍率ズームカメラが選ばれた理由

新製品のカメラキットに、デジタルカメラ「DSC-HX99」を採用した経緯をソニーの伊藤美和子氏に聞いた。

「ロービジョンの方々に聞くと、遠くのものを見る際にスマートフォンのカメラで被写体を撮って、その写真を表示したディスプレイを顔に近づけてご覧になるという声が多く返ってきました。遠くの被写体を手軽に撮影したり、見る用途に光学28倍ズーム機能を搭載するDSC-HX99が最適と考えました。コンパクトサイズで可搬性が高いカメラであることもQDレーザのアクセサリービューファインダーと好相性でした」(伊藤氏)

ソニーの高倍率コンパクトデジタルカメラ「DSC-HX99」

ソニーの高倍率コンパクトデジタルカメラ「DSC-HX99」

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編集=安井克至

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