国内

2023.04.13 08:30

新種のSaaSが400倍成長 決済やサブスク企業の利用続々

Lecto代表の小山裕(撮影=藤井さおり)

Lecto代表の小山裕(撮影=藤井さおり)

後払い決済の未払金、電気代の滞納金、サブスクリプションで借りっぱなしの服。こうした「債権」の回収をサポートする「Lecto(レクト)」が急成長している。

同社は2020年11月に創業。

・債権管理
・交渉記録の作成
・督促
・消し込み(入金額を確認し、債権をゼロにする作業」)

など、債権管理・督促回収に必要な業務をワンストップで行える「Lectoプラットフォーム」をSaaSで提供している。少なくとも国内には競合が存在しないユニークなサービスだ。
 
2022年には、Lecto上の取扱債権金額が前年の3900万円から150億円以上と約400倍に増加。創業当初は金融機関をターゲットにしていたというが、現在はサブスクリプションサービスやインフラ、行政などからも引き合いがあるという。
 
なぜ、ここまで需要が増えているのだろうか。代表の小山裕(こやま・ゆたか)に話を聞いた。


「債権業務」の課題痛感し起業

小山は連続起業家だ。Lecto創業のヒントは、前職で代表を務めた後払い決済事業から得たという。
 
「一般的に、金融サービスはまず、“与信モデルをどう構築するか”に力を入れます。僕もそうしましたが、いざスタートすると、その与信が全く機能しなかったんです。はじめは50〜60%以上返ってきませんでした」
 
データとなる母数が相当数集められない限り、完璧な与信モデルの構築は難しい。そう判断した小山は、「回収率」の改善に目をつけた。結果的にこの判断が功を奏し、1年半後には50〜60%だった未回収率を1%台にまで改善した。
 
一般的に、カード会社の最終未回収率は2〜3%、消費者金融は3〜4%と言われていることを考えても、圧倒的な回収率だと言っていいだろう。
 
小山は、この経験を通して、債権管理・回収機能のアップデートが今後の金融ビジネスの肝になると確信したという。特に債権管理業務だけはいまだにアナログなままの企業が多く、それゆえに業務が属人化され、最適なノウハウが市場に共有されていないといった課題もある。
 
多くの企業では「債権管理・回収のためだけにリソースを割く余裕がない」という理由から、カスタマーサクセスや営業が回収業務を兼任している。
 
「事業を継続していくためには、与信だけではなく、適切な債権管理、督促、回収業務によるキャッシュフローの安定化を図る必要があります。前職で試行錯誤しながら身に着けたノウハウを活かして、市場の課題を解決していければと思い、Lectoを作りました」

導入2カ月で債権回収率10%向上

「Lectoプラットフォーム」は、取引データを連携するだけで、債権管理・督促・回収・消込・償却までを自動化。人手で行われていることが多い債務者への連絡も、自動で実行することができる。

「取引件数の増加に比例して、債権管理業務に手が回らず、回収率を維持できない」。そんな課題を抱えていたサブスクサービスの提供企業は、導入後2カ月で回収率10%向上を実現。過去最高の回収金額だったという。
 
他にも、「既存システムと比べて大幅にコストダウンできた」「自動化によって債務者へのアプローチ量が3倍以上になり、回収以外の業務に時間を割けるようになった」など、ポジティブな変化が生まれている。
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取材・編集=露原直人 文=小野瀬わかな 撮影=藤井さおり

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