この名誉ある賞を受け取ったのは、テルアビブの蒸留所M&Hが製造する「エレメンツ シェリーカスク」だ。本記事では、M&Hの蒸留責任者トメル・ゴレンの独占インタビューをお届けするが、その前にまず、このウイスキーの味わいについて少し紹介しよう。
2020年半ばに発売されたM&Hシェリーカスクは、熟成のユニークな各要素に焦点を当てた「エレメンツ」シリーズの1つだ。ユダヤ教の食品生産規則「コーシャ」に沿ったシェリー樽で熟成された史上初のシングルモルトウイスキーで、スペイン・ヘレスでシーズニングされた樽を使用している。
中東の暑い気候の中で熟成され、口に含むと赤系の果実とダークチョコレート、そして最後にはタバコの香りが広がる。さまざまなフレーバーが織りなす複雑な味わいで、後味は熟成年数の記載がない「ノンエイジウイスキー」としては驚くほど長く残る。
熟成年数は公表されていないが、M&Hがウイスキー生産を始めたのは2014年であることから、最長でも10年未満となる。この比較的短い期間でこれほどの深みが生まれるのは、この地域の気候による熟成加速のたまものだ。
蒸留責任者のゴレンは以下のインタビューで、M&Hの今後などについて語った。
──今回の受賞を受けた心境は?
夢がかなった。私たちの仕事ぶりがウイスキー業界で高く評価されたということで、国際市場を一変させる可能性がある。
──シェリー樽はシングルモルトウイスキーの熟成では広く使われている。M&Hの手法の違いは?
昔ながらのシェリーウイスキーのやり方で作っている。シェリーボムではなく、バランスのとれたウイスキーだ。熟成プロセスを注意深く監視している他、上質なシェリー酒をつくるスペインのボデガ(ワイナリー)を選び、シェリー樽を調達している。
──イスラエル産ウイスキーの特徴は?
イスラエルの気候は、スコットランドなどとはかなり異なる。気温と湿度が非常に高く、年間日照日数は300日以上だ。この気候により、熟成プロセスが加速する。これは、アジャイル(機敏)で革新的なウイスキー作りにもつながっている。さまざまな種類の樽を試し、結果を早く得ることができる。
──M&Hの今後は?
私たちのコンサルタントだった故ジム・スワン博士は、小さな国土に4つの異なる気候ゾーンがあるイスラエルはすばらしい実験場だと言っていた。1年前には「テロワール」シリーズの第1弾として、高い評価を得た「エイペックス デッドシー」を発売しており、現在はさらにガリラヤ湖、エルサレム、砂漠という3つの地理的ゾーンでウイスキーを熟成している。これらの発売は約6カ月後になる見通しだ。
(forbes.com 原文)