ビジネス

2023.04.04 12:00

EV普及をにらんだシェルの一手、充電施設ボルタ買収

そのようなあらゆる変化と、ガソリンスタンドが直面する競争はコンビニ業界に深刻な影響を与えそうだ。

マーケットはどう発展するか

EV充電市場がどのように発展していくかは誰にもわからない。EV充電ステーションはあちこちにできるだろうか。ガソリンスタンドやそれに付随するコンビニは衰退し、やがて消えていくのか。それとも時間を過ごすのに魅力的な場所になるよう機能を追加していくのか。充電技術はより短時間で充電できるように進化するのか。充電の回数が減るよう、電池技術は進化するのだろうか。それは誰にもわからない。

では、そのような不確実性がある中で、なぜシェルはボルタを買収したのだろうか。

シェルの親会社であるShell plcはの市場価値は約2000億ドル(約26兆5060億円)だ。同社は既存の大規模な給油事業と燃料小売の流通網を守る必要がある。ガソリンスタンドに併設されたコンビニなどの関連事業がその給油事業のカギを握っている。EV充電業界の最先端にいることで、シェルは何が起ころうともきたる変化にどう備えるべきか、可能な限り多くの情報を得ることができる。

シェルは今回の買収で利益を生み出せるだろうか。それは何とも言えない。しかし、シェルはこの買収でメリットを享受できるだろうか。その可能性は高い。

ボルタの買収はシェルの戦略立案に役立ち、この取引を真に戦略的なものにする。そして正直かつ率直にいうと、1億6900万ドルという買収費用はシェルにとっては大した額ではなく、重要な事業の1つを守るために支出する価値がある。

消費者の新しい習慣は常に小売に予測不可能な変化をもたらす。EV充電が登場しつつあり、消費者がEVを導入することによる連鎖反応で習慣が変化していく。

EVの普及が進む中で、シェルが自動車用燃料のマーケットリーダーであり続けるかどうかは誰にもわからない。しかし同社は今形成されつつある市場構造について考えをめぐらせており、すばらしい第一歩だ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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