「わずか数日のうちに、世界中の専門家と1つの国、イタリアが、驚異的であると同時に懸念も呼んでいるこのテクノロジーの爆発的な進歩に歯止めをかけようと動いた」──。フランスの新聞パリジャンは、高度なAIの開発の一時停止を呼びかける署名活動と並べてイタリアのChatGPT禁止措置を報じた。
イタリアの個人データ保護監視機関(GPDP)は3月31日、プライバシーの懸念を理由にChatGPTの使用を一時禁止し、調査を進めると明らかにした。フランスの週刊誌ルポワンなどによると、ChatGPTは「個人データに関する法律を順守しておらず、未成年のユーザーの年齢を確認する仕組みもない」と判断された。
ChatGPTはこれまでに中国やイラン、北朝鮮、ロシアなどで利用が禁止されているが、ロイター通信によると欧米諸国でAIを利用したチャットボットに対する規制措置をとったのはイタリアが初めて。GPDPは政府から独立した機関となっている。
欧州のほかの国でも警戒論
イタリアの決定は欧州のほかの国にも波紋を広げている。フランスの新聞ウエスト・フランスは、フランスではいくつかの都市が「ChatGPTのもたらす変化や地方での利用による影響を評価する」ため、独自に調査に乗り出したと報じている。同紙によると、南部のモンペリエ市はChatGPTは「害をもたらしかねない」として市職員による使用を禁止したい考えだという。
英BBCによると、アイルランドのデータ保護委員会(DPC)はイタリアの措置の根拠を理解するためのフォローアップ作業を進めており「EUのすべてのデータ保護当局と協力していく」意向も示している。
英国の独立した個人情報保護機関である情報コミッショナー事務局(ICO)もBBCに対して、AIの開発は「支持」するとしつつ、データ保護法を順守していない場合は申し立てを行っていく用意があると明らかにしている。