アート

2023.04.04

「助けてくれない世界」で女性はいかに自分を守る? 米国で注目の戯曲

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性暴力の被害者を支援する米国最大規模の団体の1つ、RAINN(レイン、レイプ・虐待・近親相姦・全国ネットワーク)によると、国内の性暴力の被害者数は毎年、数十万人にのぼるという。

被害者は18~24歳の女性が最も多く、大学に通う女性の26.4%が、レイプや性暴力の被害にあった経験があるという(男性は6.8%)。

イェール大学出版局が毎年開催する新人脚本家の作品コンテスト「イェール・ドラマ・シリーズ」で2019年に優勝したリリアナ・パディーラの『How to Defend Yourself(あなた自身を守る方法)』が、2月22日からオフ・ブロードウェイのニューヨーク・シアター・ワークショップで上演されている。

仲間の1人がキャンパス内で残酷な暴力とレイプの被害に遭った女子学生たちの結束と、彼女たちが創設した「DIYの護身術クラス」を取り上げたこの脚本について、パディーラは当初「ためらいがあった」と話している。

レイプの被害という慎重に扱うべき問題をテーマにすることには、当惑も、誰かを傷つけることになるのではという不安もあったという。だが、パディーラはこの作品について「最終的には、集団としての私たちについて、私たちが支配に対しどのように反応するかについてのストーリー」だと語る。

物語のなかで自己防衛は、彼女たちにとって自らの「怒りと不安、混乱、心の傷、そして願望」を表現する手段になっていく。

また、脚本で描かれているのは「事件が起きた後」のことだ。被害に遭った後の「スザンナ」とその仲間たちのことが描かれており、性暴力そのものについては、触れられていない。

主な登場人物は、同じソロリティ(女子学生たちのクラブ)のシスター(メンバー)であるスザンナと仲間たち。スザンナのために何かしたいと考えた「ブランディ」と「カーラ」が、女子学生を対象とする護身術のクラスを「自分たちで」計画し、開始する。

作品のなかでブランディは、このワークショップに参加した女子学生たちに、次のように語りかけている。

「ここで取り入れていくのは、複数のテクニックです。みなさんが安全に帰宅するために効果的な、あらゆるものです」

「私の願いは、皆さんにツールを提供することです……みなさんがもっと自分自身に、そして自分の危険を回避する力に自信を持てるように」

カーラを演じるサラマリー・ロドリゲスは、この作品が伝えようとするのは「ソロリティのメンバーが自分たちで護身術のクラスを開講した」ということだけのことではないと話す。

描かれるのは、(事件の)トラウマが彼女たちに、そして彼女たちと周囲の環境やコミュニティとの関係に、どのような影響を及ぼしたのかというより大きな問題だ。まだ成人したばかりの若者たちが「自分たちを『守ってくれない』世界」のなかで、いかに自分自身を守っていくかが描かれている。

ロドリゲスはそのほか、この作品は彼女自身の「心を奪い、壊し、吹き返させ、新しいものにした」と話している。自分でも恐れを感じるような自分自身に、向き合う必要もあったという。ただ、最終的にはカーラに共感することが、再び自分自身に思いやりを持てるようにしてくれたと語っている。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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