新しい取り組みをする場合、現状を守ろうとする抵抗勢力が出てきます。そして、DXの場面では、抵抗勢力は組織の重要ポジションにいる声の大きな方ということがよくあります。そこで、組織で力のある方にスポンサーとしてDX推進者の後援者になっていただくことです。
抵抗勢力の声を完全になくすことはできなくても、周りに影響を与えるほど、大きな声で異議を唱えることはなります。そうなれば、DX推進者は本来やるべきことに集中して、推進できるようになります。
5. 一緒にDX取り組むアンバサダーを、現場から招き入れる。
新しい取り組みで最も効果的な習得手段は、同僚からの学びであると言われています。実際、私たちも日々困った際には、全社の問い合わせ窓口に連絡するよりも近くの人に聞くことが多いのではないでしょうか。アンバサダーは、その問合せ先となり、分からない、使えない、を減らします。
6. 社内コミュニティを設定する。
5と類似ですが、自分と同じ課題を抱える人と出会い、一緒に課題を解決できる仲間を作ってあげることで、一緒に良くしようと考える場ができます。
7. DX取組を思い出してもらうための施策を定期的に実施する。
日々業務を遂行しているなかでは、なぜDXに取り組んでいるのか、記憶し続けることは難しいです。そこで、定期的に勉強会を実施し、新しい取り組みをインプットする活動を行うことが必要です。
以上、述べたチェンジマネジメントの手法は、実際にニトリホールディングスで使用され、業務改革に大きく貢献しました。
ニトリHDで、新しいコミュニケーションツールを導入した際、ある一定数までは利用者が伸びたものの、2カ月を過ぎたところで鈍化してしまいました。そこで、役員にスポンサーになってもらい、活用を促すためのメッセージを何度も発信。さらに、各部門から1名、このコミュニケーションツールのスペシャリストとしてアンバサダーを任命しました。
結果、最初は新しいツールの利用方法が分からず止まっていた人たちも、アンバサダーから利用方法を教えてもらうことで徐々に使用できるようになっていきました。
また、アンバサダーを介して展開される新しい仕事のやり方や、社内の成功事例は、現場にとって魅力的な内容であり、結果としてできる人が徐々に増え、ツールが現場に定着していきました。
変革をするためには、現場で変わろうという意識の醸成が必要です。そして、現場が変わろうという意識を持つためにはビジョンと成功体験が不可欠です。チェンジマネジメントを活用し、まずは環境を整えてみてはいかがでしょうか。
中村祥子(なかむら・しょうこ)◎2000年4月より現日立ソリューションズでソフトウェア品質保証エンジニア、プロジェクトマネージャー、システム導入コンサルタントを歴任。2019 年より日本マイクロソフトに入社しカスタマーサクセスマネージャーに従事。お客様の事業ビジョン実現に向けて、デジタル活用や組織のチェンジマネジメントをお客様とともに推進。2022年11月よりINDUSTRIAL-Xにて事業開発ディレクターとして、企業DXのみならず産業DXにも挑戦中。「人生一度きり」をモットーに、東京と静岡の二拠点生活、伊豆市CIO補佐官にもチャレンジしている。