この新法に基づき、300人以上が集まるあらゆるイベントで、アルゴリズムに基づいた自動映像監視システム(AVS)が使用される。仏紙Le Monde(ル・モンド)によると新法はすでに施行されており、2024年末まで有効だという。
このシステムは、顔認識など個人を特定できるような生体認証システムを使用してはいない。その代わり、アルゴリズムによって大量の映像を迅速に分析し、奇妙な動きや異常な行動、放置されたカバンなどの不審物、火災といった危険信号になり得るあらゆるものを検出する。
AIセキュリティシステムの支持者は、五輪観戦客が大挙してパリにやって来る状況下ではなおさら、より高い安全性を実現できると説明している。危険をいち早く察知することで警備関係者に警告を発し、すばやい対処が可能になるというのだ。
エマニュエル・マクロン政権とパリ五輪組織委員会は、五輪開催中の重大な安全保障上の脅威を防ぐために国はあらゆる手段を駆使しなければならないと主張している。
しかし、欧州議会の議員団や国際人権団体Amnesty International(アムネスティ・インターナショナル)などは、前例のない人権侵害であり、実際に犯罪を抑止した実績が乏しいと批判している。また、五輪閉幕後も政府が何らかの方法でシステムの使用を延長するのではないかと懸念する声も上がっている。
「これは大規模な監視ツールだ。警察が人々の行動を分析し、警察関係者の固定観念に基づいて、誰が正常で誰が疑わしいか決定するのを容認するものだ」と、フランスのデジタル権利団体で法律顧問を務めるノエミ・ルバンは仏国営放送RFIに語った。
新法は非公式に「五輪警備法」と呼ばれているが、実際にはスポーツイベントやコンサートなど、すべての大規模集会が対象となる。9月からフランスで開催されるラグビーワールドカップでも使用される。
(forbes.com 原文)