重量31トンで、20mm機関砲とミラン対戦車ミサイル発射機を備えたマルダーは、ウクライナ軍内で進行するある問題を解消するものとなる。その問題とは、装備の軽装甲化だ。
ドイツは1月、ウクライナに対してマルダー40台を供与すると表明。引き渡しは3月下旬に始まった。ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は「マルダーは、ドイツ製品の質を示すすばらしい例だ」とツイートしている。
ドイツの防衛機器大手ラインメタルは1960年代後半にマルダーを設計した際、装甲に重点を置いた。初期モデルは正面に傾斜装甲を用い、厚さ53~70mmあるいはそれ以上の鋼鉄に相当する防御力を有している。側面の防御力は、厚さ33mm以上の鋼鉄に相当する。
この防御力は現代式戦車の10分の1ではあるが、1970年代のIFVとしては高性能だ。マルダーのベースモデルは、数百メートル先から発射された30mm機関砲の弾をはねのけることができる。
これに対し、ソビエト連邦が初めて開発したIFVであるBMP-1は、重量が14トン、装甲は最も厚い部分でも33mmしかなく、防御力は12.7mm機関銃による攻撃に耐えられる程度だ。
簡単に言えば、マルダーの防御力はMBP-1の2倍だ。重量が2倍以上であることを考えれば、当然の結果だろう。
ハイテク兵器が投入される戦場にBMP-1で乗り込むことは、ほぼ死を意味する。そのためウクライナ軍はかねて、より新型で装甲の厚いBMP-2への置き換えを積極的に進めていた。
昨年2月にロシアが侵攻を開始する前、ウクライナ軍はBMP-2を900台、BMP-1を200台運用していた。だが1年1カ月の戦闘で、100台以上のBMP-2と300台近くのBMP-1を失った。
同盟国はこの損失を埋め合わせるための軍事支援を行ってきたが、当初供与された装備は米国製のM113装甲兵員輸送車700台やBMP-1約200台など、装甲が薄いものばかりだった。アルミ合金装甲のM113はBMP-1と同じく、重機関銃による攻撃には耐えられるが、機関砲には弱い。