web3の到来で、お金の意味も使い方もアップデートされる未来がやってくる。新しいお金の時代に活躍できる人材とその育て方を解説する。
現在のお金の仕組みは、web3の到来とデジタルトランスフォーメーション(DX)を含めたテクノロジーの普及によって大きく変わる。そう指摘するのは米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの元所長で現在デジタルガレージ取締役、千葉工業大学変革センター長を務める伊藤穰一だ。web3の時代に、お金の価値や使われ方はどう変化するのだろうか。
伊藤が挙げる、新しい時代のお金のいちばんの特徴は「透明性の高さ」だ。暗号通貨だけでなく、スマートコントラクトなどブロックチェーン技術は改変が困難で、取引の透明性が高い。お金の動きが可視化され、貨幣価値だけではない複雑な人間の関係性も表現できる。
「技術や法律を理解していれば、お金を含めた自分の周りの組織の関係性を直接見たり変えたりすることもできます」
どういうことか。これまで税金や投資といったお金の仕組みは複雑で理解が困難なうえ、個人で影響を与えるのは難しかった。しかし、web3の透明性とAIの解析能力が合体すれば、自分のお金が最終的にどのように自分の地域や環境、社会全体に影響を与えているのかまでわかる。
自分の税金や年金、財産などを役所やファンドマネジャーに任せっぱなしにするのではなく、自分の倫理観や意志をもとにお金の使い先や投資先を選ぶ。お金の使い方を主体的に選ぶこととは、その意思決定に「参加」することだ。「国だけでなくて全員が自分の市町村の経済に対してステークホルダーであり、参加者である社会に変わっていくのです」
この全員参加型の社会で求められるのは、「お金と技術のリテラシーをもち、新しいツールを学び続けられる好奇心がある」人材だという。前提として、技術の理解は不可欠だ。社会の変化が技術から起こっているので、ある程度技術を理解できないと未来を語れない。ブロックチェーンの基本的構造がわからなければ、より良い使い方すらも想像できない。
「変化が大きい時代にはつねに学び続けなければなりません。自分で自分をモチベートする内在的動機がなければ、学び続けることは難しいでしょう」
では、そのような人材はどう育てるのか。重要なのは、小さな時からの「遊び」だという。「遊びの中から自分の興味が見つかるからです。日本人は子どもを型にはめようとすることが多いですが、変わったものにはまっている子を普通にしようとすべきではない。命令に従いきちっとやるお利口さんが求められる時代から、言うことを聞かなくても、夢中になれるものがあることが強みになる時代です」。
いとう・じょういち◎ベンチャーキャピタリスト、起業家、作家。2011年から19年まで米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を務めた。主な著書に、『テクノロジーが 予測する未来』(SB新書)など。