19年3月に同社が実施したシリーズAラウンドに、ソニーベンチャーズの鈴木大祐は投資担当として参画。22年6月のシリーズBエクステンションラウンドでは追加投資を行った。その理由とは。
鈴木:きっかけは、ソニーグループCTO/ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長の北野(宏明)さんからのご紹介でした。山崎さんは大変誠実なお人柄で、ロボットについて国内有数の知見をもつ方でした。
山崎:私は北野さんの下で研究員をしていた時期があって、かれこれ25年ほどのお付き合いなんです。実は、起業したときにイクシスの名付け親になってくれたのも北野さん。ありがたいことに、それからの20年間は、受託開発を中心にやってきて、順調にお客様に納入できていました。ただ、我々が本当に社会の役に立っているかというと、そこまでには至っていないという反省がありました。そこで事業モデルの転換を決断し、外部からの支援を求めて北野さんに相談したという経緯です。
鈴木:イクシスはもともと黒字経営でしたが、以前のビジネスモデルでは、売り上げが横ばいの状態でした。しかし、ロボットがしっかりと社会に実装されるモデルに変えていきたいという強い意志と、綿密に練られた事業計画について議論を進めていくなかで、山崎さんはきっとやり遂げるだろうと感じました。安定的に大手の建設会社などに納入が拡大している実績は、技術力の高さだけでなく、顧客にも評価されている証左だと思います。
山崎:ロボットを活用した業務自動化という世の流れは確かですが、残念ながら現在のインフラ産業では、それを活用する環境がまったく整っていません。人手で行う前提の業務を、いきなり完全自動のロボットに置き換えても、使いこなせずに終わってしまう。ロボットは主役ではなく、お客様の課題を解決するためのひとつのツールに過ぎないのです。
例えば、我々の売れ筋製品のなかには、モーターが付いていない手押し式の点検ロボットがあります。インフラ点検と聞くと、作業員がヘルメットかぶって現場を見て回るイメージが強いですが、それは業務全体の3割くらいしかなくて、実際は紙ベースで行われている点検記録の整理に多くの労力が割かれている。
そこで求められているのは、データ収集の自動化ではなく、誰でも定量的なデータが取れて、それが自動で整理されて、時間軸でその変化が追えること。視点をロボットからデータに変え、そこに技術を使うビジネスモデルに変えてきたのがこの数年間です。
鈴木:投資後には、着実に売り上げが成長しています。並行して、ソニーグループとの連携も目に見えるかたちで進捗しています。