韓国の財閥SKグループ傘下の「SK ON(オン)」もそのひとつだ。同社が近い将来世界最大のEV電池メーカーになる、と宣言した背景にある熾烈な競争とは。
SKオンの共同最高経営責任者(CEO)チ・ドンソプ(59)は、シンプルかつ大胆な目標を同社に課している。2030年までに生産量で世界最大のEV用電池メーカーになるというものだ。
「間違いなく世界1位と肩を並べているか、世界最大手の電池メーカーになっているでしょう」
チは韓国・ソウルでのフォーブスとの独占インタビューでそう語った。チがインタビューを受けるのは、同社のトップになって以来、今回が初めてだ。
ソウル拠点のSNEリサーチの8月の報告書によると、SKオンは現在、世界5位のEV電池サプライヤーで、その生産能力は13.2 GWh。同社の電池の年間売り上げは、19年の5億3000万ドル、20年の12億ドルから21年には23億ドルに達した。
3年前には存在すらしなかった企業であることを考えれば、これは大変な快挙だ。SKオンは21年10月にSKイノベーションからスピンオフした。SKイノベーションは従来のエネルギーと代替エネルギーの両方の事業を展開する持ち株会社で、韓国有数の財閥SKグループの傘下にある。
急成長中とはいえ、SKオンの目標達成までの道のりはまだ長い。現在、世界最大のEV電池メーカーは中国の寧徳時代新能源科技(CATL)で世界市場の約35%を占めている。450億ドルを超える資産を保有するビリオネアの曾毓群(ロビン・ゼン)が率いるCATLは、BMWやテスラなど大手自動車メーカーに電池を供給している。2位は韓国のLGでシェアは約14%、3位が同12%の中国のBYD、4位は同10%の日本のパナソニックだ。SKオンのシェアは6.5%ほど。21年にサムスンを抜いた。
SKオンの試算では、30年までに世界のEV市場の規模は2.5TWhに達し、少なくとも2630億ドルになるという。EV1台が標準的な80kWhの容量の電池を搭載するなら、3130万台規模の市場になる計算だ。目標達成のため、SKオンは大規模な海外進出を計画している。22年3月には、米国の自動車大手フォードとトルコでEV電池工場を立ち上げる合弁会社を設立。25年稼働開始の予定で、年間生産能力は30〜45GWhになるという。