ビジネス

2023.03.31

JTBのリブランディングは完全復活を告げる狼煙となるのか

代表取締役 社長執行役員 山北栄二郎

「当時、中東は紛争が絶えず今よりも遠い国で、わかりあうのは難しいと思っていました。でも、現地の人がお客様を喜ばせようと一生懸命でね。人間はみんな同じ。交流したからこそそれがわかりました」
 
プライベートでも旅を重ねた。ボルドーの醸造所で生産者と語らいながら飲むワインの味。国際スポーツイベントを観戦したときの高揚感。「人間があの感動をやめられるわけがない」がいつしか持論になった。

交流の達人である山北でもコミュニケーションに苦労することはある。東欧進出で、合併していたハンガリーの会社に社長として赴任したが、現地社員はサービスに対する考え方が成熟しておらず、何度話をしてもわかりあえなかったが、買い物のつきそいを頼んだ後、風向きが変わった。

「ハンガリーはマジャル語で、スーパーで表示を見ても、シャンプーかリンスかわからない。困っていたのでお願いしたら、その後『こんどワインフェスティバルがあるから一緒に行こう』と。ありのままの私を見せたことがよかったのでしょう」
 
すべてさらけ出せば人は信頼してくれる。コロナ禍後、社員に経営メッセージを伝える際に透明性を重視したのも、この経験が生きている。
 
JTBは昨年11月にリブランディングを発表。今年4月から背景色が12パターンの新しいロゴを使用する。35年ぶりのリブランディングで何を伝えようとしているのか。「これまでは赤い看板の店舗のイメージが強く、ほかのビジネスの認知が低かった。12色を使うことで、社員も多様で、幅広いビジネスをやっていると伝えたい」
 
リブランディングが完全復活を告げる狼煙となるのか、注目だ。


やまきた・えいじろう◎1963年生まれ。早稲田大学を卒業後、日本交通公社(現JTB)入社。営業部門に携わり2006年JTB旅行事業本部グローバル戦略担当へ。以降海外事業で手腕を発揮。17年にJTB欧州代表に就任し、20年に常務執行役員。同年6月より現職。

文=村上 敬 写真=苅部太郎

タグ:

連載

10年後のリーダーたちへ

ForbesBrandVoice

人気記事