コロナ禍を経て、2019年以来、4年ぶりのリアルイベント。会場となった総合リゾート、リゾート・ワールド・セントーサのボールルームには受賞シェフやメディア関係者など、約800人が集まった。
「ベストレストラン50」は、レストランのリストもさることながら、毎年表彰式がシェフ同士の交流の場ともなり“ファミリー”と呼べるようなコミュニティを生み出していることも特徴だ。マスクの着用義務からも解放されたこの春、4年ぶりの再会を喜ぶ姿がそこここで見られた。
アジアNo.2に東京のフレンチ
ベスト50のリストは、毎年50位からのカウントダウンで発表されるが、50位以内にランクインしたシェフには事前に赤いマフラーが渡されることから、2位の発表の時には自動的に1位が判明する形となっていた。それが今回、発表の方式が変更となり、順位を伏せた状態でトップ2つのレストランが舞台に招かれる形となった。トップ2としてそれぞれ壇上で紹介されたのは、東京のモダンフレンチ「セザン」とタイ・バンコクのモダンタイ料理「レドゥ」。 一度降壇したのち、再度ステージに上がり、No.1となったのは「レドゥ」だった。
今回のリストは、より地域の個性が反映されたものとなった。「レドゥ」と「セザン」の共通点は、フランス料理の技法をベースに、地元の食材の素晴らしさを引き出している点だろう。コロナ禍で航空便が減便されたことなどにより、海外からの食材の入手が難しかった時期などを経て、いずれも一層地域食材への関心や追求が深まっているようだ。
「レドゥ」は、タイ語で「季節」を表し、100%タイ産の食材を使う。オーナーシェフのトン・ティティッ・タッサナーカジョン氏はニューヨークのフランス料理店、イレブン・マディソン・パークなどで修業を重ねたのち、10年前に店をオープンした。
当時は「質の低い地元の食材だけを使った高級料理店など、半年でつぶれてしまう」と言われ、タッサナーカジョン氏自身も、「どんなに良い品も一括りで、一律の値段で取引されていたこともあり、生産者の意識も低かった」と振り返る。それを、生産者との直接取引したり、品質向上のためのフィードバックを行ったりすることで生産者のモチベーションを上げ、タイ料理を、フランス料理などと並ぶ高級料理にするべく奮闘してきた。
タッサナーカジョン氏はレドゥのほかにも、複数のレストランを持つ。「多様な視点からタイ料理を昇華させたい」と、伝統的なタイ料理を供する「ヌサラ」も今回3位にランクインした。