こうした課題を解決するべく、2018年に誕生したのがリチウムイオン電池の金属部分を樹脂にした「全樹脂電池」だ。従来製品の2倍の体積エネルギー密度であるほか、発火の危険性が低く、素材をリサイクルできるため環境対策にもなる。
開発したのは、福井県に本社を置く「APB」。同社の堀江秀明代表は、EV車「日産リーフ」のバッテリーシステムを開発したエンジニアだ。APBはこれまで88億円の資金を調達しており、2026年の量産化を目指し、福井県内の生産工場で稼働試験を進めている。
そうしたなか、3月27日には、サウジアラビアの国営石油企業「サウジアラムコ」との連携協定締結を発表した。サウジアラビアは現在、脱炭素社会の構築に取り組んでいる。同国は日照率が高く、太陽光発電を行っているが、そのエネルギーを溜めることができないという課題がある。そこで「全樹脂電池」に注目したというわけだ。
今後APBとサウジアラムコは、共同で樹脂素材の技術アップデートや生産体制の強化に取り組み、全樹脂電池の世界展開を始めるという。