アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は景気後退時にも利益を確保する取り組みの一環として、返品率の監視を義務づけた。返品はかねて伝統的な小売業者でも増えていた。たとえば新型コロナウイルス禍の間、百貨店の上客たちはよく、サイズ違いの服を3、4着まとめて注文して郵送してもらい、購入する1着だけ手元に残して、残りは返送していた。店舗で試着できなかったため、そうしないとぴったり合うサイズを選べなかったからである。
アマゾンはここ数カ月の間に、客が購入しようとしている商品の返品率が高い場合、ページの「この商品について」の下に「よく返品されています」という警告ラベルを表示するようになっている。あわせて、購入前に詳細情報やカスタマーレビューを確認するよう促している。テック系ネットメディアの「The Information」は、返品はコロナ禍の間に激増し、電子商取引(EC)業界全般でコストのかさむ問題になっていると指摘している。
アマゾンに出品している業者からは、アマゾンの寛大な返品制度が返品を助長しているとの声も聞かれる。確かに百貨店のノードストロームも、簡単で寛大な返品ルールにした結果、デザイナーズブランドのアパレル製品の返品が増えた。コロナ禍の直前に導入されたノードストロームの方針が先例となり、ほかの小売業も続々と同様の返品ポリシーを取り入れることになった。
返品された服は、においや粉などがついて販売できなくなるものも多い。リサイクルショップ送りにすればよいのかもしれないが、その場合、百貨店にせよアマゾンにせよ元の販売者はやはり損失をかぶることになる。
アマゾンの収益性向上に向けたジャシーによるこうした取り組みは、レディースアパレルなど既製服市場にも力を入れた創業者のジェフ・ベゾスの取り組みとは逆行する。「よく返品されています」ラベルの導入という新たな試みによって、今後アマゾンの客の行動にどんな影響が出てくるか注目したい。
(forbes.com 原文)