「その日は突然やってきた」
チームも渡邊も好調を維持し、気が早いですがプレーオフで早く渡邊を見たいと思っていた矢先、突然チーム状況が一変します。2月のトレードデッドライン前にアービングがトレード要求。アービングはシーズン後にフリーエージェントになり、本人はネッツに大型契約を要求しましたが、チームと折り合いがつかずトレード要求をしたのではないかと言われています。その後数日のうちに、アービングはダラスマーベリックスへ移籍。その見返りにネッツは渡邊と同じポジションで経験豊富なフォワードのドリアン・フィニー・スミスを獲得しました。このトレードは衝撃ではあったものの、この時点では渡邊は今後も充分なプレイタイムをもらえるだろうと思っていました。しかし、この後チームに激震が走ります。
ネッツはチームの大エース、デュラントをフェニックスサンズへトレード。
プレーオフ進出がほぼ確定的な状況から、エースの2人をトレードしたのです。チーム状態が良い中でエース2人を放出した出来事はNBAの歴史の中でもあまり例がありません。この件についてより詳しい背景を知りたい方は、YouTubeで話してますのでご覧ください。
デュラントのトレードが渡邊の環境を大きく変えてしまいました。
この見返りでやってきた主に2人の選手が渡邊と同じポジションであり、渡邊以上にスキルや経験が豊富な選手だったのです。
1人目がミカル・ブリッジス。サンズでは不動のスタメンで今後オールスターも狙えるポテンシャルを持った選手です。
2人目のキャメロン・ジョンソンもNBA加入4年目ですが毎シーズン実力をつけており、ディフェンス、シュート共に定評のある選手です。2人は2021年にNBA Finalにも進出するなど活躍してきました。まとめるとトレードデッドライン後、渡邊と同じポジションに、渡邊よりも実力が勝る選手が3名も加入したのです。
ミカル・ブリッジス(左)とキャメロン・ジョンソン(ブルックリンネッツの公式インスタグラムから)
ローテーション外になってしまった渡邊
トレードデッドライン後、渡邊はチームのローテーションから外れてしまいました。それまでは1試合20分ほどの出場機会があった渡邊にとっては、厳しすぎる現実でした。ネッツ監督ジャック・ヴォーンもこの決定について渡邊に謝罪をしたと話しています。その後、2月のオールスター明けから3月終盤まで渡邊が起用されることはほとんどありませんでした。試合に出れない日が続き、悔しさや葛藤は相当あったと思いますが、マイナスな影響をチームに与えることはありませんでした。むしろ渡邊は試合に出れずともベンチから声を出したり、良いプレーをした選手を称えたり、チームにとって貢献できることを必死に探していました。
チーム全体としてはエース2人が抜けたことにより負けが立て込み、シーズン前半の流れを継続できなくなりましたが、僕から見て、渡邊は常にチームのことを一番に考えているように見えました。